太陽エネルギーで世界一周飛行を目指す、夢のソーラーインパルス・プロジェクト(後編):秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
2013年、ソーラーインパルスはいよいよ世界一周に挑む。そのための2号機“HB-SIB”の開発もすでにスタートした。夢への大きな一歩となった、2010年7月の“24時間連続飛行”。当時の様子を振り返りながら、2人のリーダーにインタビューに答えてもらった。
目標実現には日本の先端技術も不可欠
──世界一周飛行に向けて開発中の2号機は、さまざまな設備や機能を付加しなければならないぶん、機体の重量も当然増しますね。ソーラーバッテリーの効率アップを含め、より一層の軽量化技術も取り入れていかなければならないわけですか?
ボルシュベルグ とてもいいご指摘です。新しいシステムを入れると同時に、バッテリーをより軽くし、ソーラーシェルやモーターの効率も上げていかなければなりません。その両方をどうバランスよく実現していくかが、これからの課題です。
──いま現在、ソーラーパネルはアメリカ製の、バッテリーは韓国製のものを使っていると聞いています。これからはもっともっと目を世界に広げて、いい技術を持つ国やメーカーから供給を受けることになるのでしょうか?
ピカール おっしゃるとおりです。ソーラーパネルも電池も、よりいいものを探さなければなりません。われわれが求めているのは、単純なパートナーというより、先端技術をもつサプライヤーです。
──とくに日本から供給を受けたい技術というのはありますか?
ボルシュベルグ ソーラーインパルスは機体の8割から9割がカーボンファイバーでできています。日本が世界で最も進んでいる先端技術の1つが素材技術で、カーボンファイバーに限らず、ほかの材料も含めて2号機の機体材料には日本の技術を積極的に取り入れたいと思っています。
──最後に、このプロジェクトの目的について改めてお聞かせください。
ピカール 世界で最初の有人動力飛行は1903年でした。そしてその47年後に、本格的な旅客機ボーイング707が飛んでいます。その約50年の間に、大きな技術の進化がありました。ところが、その次の50年間では、あまり目立ったイノベーションは見当たりません。単に効率を上げたに過ぎない50年でした。ソーラーインパルスでは、最初の50年の発端になったようなイノベーションを起こしたい。枯渇することがなく、環境も汚さない自然エネルギーを使って、われわれの技術で何ができるのか? 既存の技術だけでも人類はここまでできるんだというメッセージを、私たちは世界中に伝えたいんです。そんなメッセージをいっしょに発信してくれる仲間として、日本の企業や技術者たちにもぜひ加わってほしいと思っています。
(ソーラーインパルスは2011年6月20〜26日のパリ航空ショーに特別ゲストとして招待され、デモフライトなどを実施する予定です)
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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