なぜ菅さんが首相ではいけないのか?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
菅首相の進退について日々憶測が飛び交っている。筆者は、目の前のことをあれこれと「食い散らかす」菅首相の姿勢に疑問符を付け、復興を軌道に乗せることが第一とした超党派の協力体制を構築することが大事だと主張する。
復興を軌道に乗せることが第一
もともと財政再建が必要だというのであれば、本来2011年度予算はその方向性を打ち出さねばならなかったはず。明らかに財政支出のカットをしなければならなかったのである。しかし支持率を気にする(というより首相の座に固執する)菅首相は、評判の悪い財政支出のカットをできなかった。国債発行は前年を上回らないというので精一杯だったのである。つまり、財政再建をどれほど重要だと考えているか、よく分からないのが菅首相である。
民主党は本来的に財政支出を縮小するのは苦手な政党だ(社会民主主義的な側面を持っているからである)。それだからこそ、首相が強いリーダーシップを持っていなければならなかったのに、「日和見主義者」あるいは「ポピュリスト」である菅首相には無理な相談だったと思う。
実際、税と社会保障の一体改革では、最も肝心な社会保障への切り込みはまったくと言っていいほど見られない。持続可能な社会保障にするためには、団塊の世代が対象になり始めるこの時期に、社会保障を切り詰めることをしないと、それこそ「歴史への反逆」になりかねないのに、そこに手をつけなかった。
今、菅首相が食いついているのは再生可能エネルギーを電力会社に買い取らせる法案である。もちろん自然エネルギーの促進は世界の潮流でもあり、日本の産業という観点からも重要な課題だと思う。しかし、震災復興と財政再建という焦眉の課題、それも極めて切迫している課題があるときにやることだろうか。それも自分の「辞任」を引き換えに会期を延長させることまでしてやる価値のある法律なのだろうか。
何よりも今は復興を軌道に乗せることが第一。そのために政治ができることは超党派の協力体制を構築することである。もちろんそれは「大連立」などという大仰なものである必要はない。復興協力内閣であればいいだけである。これから1年間という限定でやればいい。その間、意見が対立するような案件は棚上げにしてもいい(ただし財政再建だけは道筋をつけなければいけないと思う)。そういう時に、支持を得られそうな政策を漁るようなリーダーは百害あって一利すらない。
もっとも権力の座にあることがすべてである指導者には何を言っても通じない。それは歴史の示すところでもある。復興どころか、この大震災が日本という国が坂道を転げ落ちる転機になってしまっては犠牲になった3万人の人々は浮かばれない。
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