覚せい剤を密輸した男が明かす、北朝鮮の仕事術:窪田順生の時事日想(4/4 ページ)
「人工衛星」騒動で北朝鮮が注目を集めている。ビジネスパーソンとしては「相変わらずよく分からない国だな」ぐらいしか感想はないだろうが、実は彼らから学ぶこともある。それは、我々日本人が忘れてしまったものだ。
北朝鮮の「ハート」の強さ
今回の打ち上げ失敗で、メディアは北朝鮮の「技術力」に注目しており、NHKなどは、イランによる技術協力があったのでは、とアメリカ軍関係者の見方を報じている。
だが、本当に怖いのは北朝鮮の「技術力」ではなく、それを実行する「人材力」にある。彼らは30年前から、日本近海に忍び込み、木造船で夜の闇にまぎれて上陸し、そのまま日本人をさらって再び漆黒の海に消えるという卑劣な犯罪を続けてきた。
そんな常識では不可能と思えることをやってのけた原動力は、彼らの「軍隊」仕込みの正確な仕事術。そしてハートの強さだ。
平壌で行われたサッカーの試合で、日本代表が北朝鮮代表に敗れたのはアウェーだけが理由ではない、と私は思う。
今の日本人だったら「そんなのムリに決まってるじゃん」と投げ出しそうな仕事でも、「北」の若者は大マジメに、そしてマシーンのような正確さで取り組む。確かに「北」は技術も未熟で、ツッコミどころ満載だ。だが、不可能を可能にする「人」は豊富だ。
スーツ姿を初公開して、また世界中からツッコミを入れられている金正恩第1書記。だが、今回の失敗にめげることなく、またマンガみたいな計画をくわだてているに違いない。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
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