「栄転」か「流転」か……転職の良悪を判別する方法(3/3 ページ)
転職の「転」の読みは「転がる・転ぶ」である。転職によって、良い方に転がる場合もあるし、悪い方に転ぶ場合もある。その分岐点はどこにあるのか。
その転職が「栄転」になるか「流転」になるか
私は転職を否定しません。長いキャリアの途上で状況創造を行っていくときに、働く環境を変えることが良いと思われる状況は起こってきます。
その転職が、果たして「栄転」チャンスとなるのか、それとも、流転」リスクになるのか。それを判別するための簡単なチェックシートを用意しました。
次の表の6つの質問において自分の状況や思いに近い月を選んでください。左側に多くチェックが付いた場合は栄転する転職、つまりポジティブな展開になりやすいでしょう(=P型転職)。逆に、右側に多くチェックが付いた場合は流転する転職、つまりネガティブな展開になりやすい状況です(=N型転職)。
P(栄転)型とN(流転)型の違いは、結局のところ、自分を強く持っているか、未来像を強く持っているか、動機がどこにあるか、の違いです。質問ごとの解説は次の通りです。
【Q1】
転職の動機が未来にあるのか、それとも現状の不安にあるのか。P型転職を実現する多くの人たちは、強い未来志向であるがために、現状に物足りなくなって、もう一段高みのキャリア舞台を求めて転職という選択肢を取る。他方、N型転職に陥ってしまう人は、何となく現状がうまくいかない、現状から逃避したいという思いから転職に走ってしまうことが多い。
【Q2】
自律のワークスタイルか、他律のワークスタイルか。P型の特徴は、仕事のさまざまな部分に、自分を織り込んでいく意志・習慣の強さである。組織・他人の流儀にどっぷりつかっているだけの人は、キャリアも他力本願になりやすい。
【Q3】
キャリアや人生の憧れ像(ロールモデル)を抱いて、自分もそうなりたいというエネルギーを内面からふつふつと湧かせているかどうか。
【Q4】
負けん気の強さがあるかどうか。
【Q5】
自分の未来像、像ではなくとも方向性を具体的に言葉に表現できるかどうか。
【Q6】
自分の仕事結果とそれを生み出したプロセスをきちんと語れるかどうか。
P型転職を実現する人は、大なり小なり「マイ・プロジェクトX」となるべき物語をいくつか持っている。そして転職活動時には、それを自己PR材料にもうまく利用して、良い採用案件を勝ち取っていく。N型の人は、自分の仕事結果に対する執着心が薄く、そのために「何となく仕事」のあいまいな就労姿勢で日々をやり過ごす。だから、転職も「何となく転職」の気分で行う。
【Q7】
自分の内に革新的な意識が高まれば高まるほど、相対的に周囲の人間が保守的にみえてくる。時にこの意識は独りよがりのこともあるが、エネルギーとしては強いもので、転職による環境の変化を乗り越えていくには大事なエネルギーになりうる。他方、職場の雰囲気や人間に対し、革新的か保守的かに無頓着な人は、恐らくその職場に留まった方が良い人である。
転職(=変化を仕掛ける)にせよ、現職に留まる(=変化を仕掛けない)にせよ、その選択肢は、その時点では正解でも不正解でもありません。その後、自分がその選択肢をどう「人生の正解」に持っていくかです。
そして最後にもう1つ加えるなら、転職は「どんな会社に」「どう入るか」「いくら年収をアップさせるか」の問題ではありません。「どう働きたいか」「どう生きるか」という再決心の問題です。(村山昇)
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