「不要採用」とは何か――イマドキの就活は「厳選採用」でもないという話:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)
イマドキの新人採用は「厳選採用」と言われます。数名の枠に数千名の希望者が殺到する人気企業も珍しくなく、結果、何社受けても連戦連敗という就活生が多数生まれているのが現状。しかしその一方で“楽勝”な採用も進化していることをご存じでしょうか。今ごろピークを迎える「不要応募」とは……?
不要応募を生み出してしまう原因とは
話を就活生に絞りますが、極端に高度化した選考プロセスがある一方で、著しくハードルを下げた選考がある、というのが今の就活です。そう、一概に厳選採用であるとはいえないのです。
どうしてそういうことが起きてしまうのでしょうか。原因はいくつかありますが、大きなものは「機会の均等化」であると私は考えています。イマドキの就活は、ナビサイトのオープンとともに一斉にスタートします。それこそ、有名大学だろうと無名大学であろうと関係ありません。みんな横一線で始めます。すべての学生が、すべての企業に応募できますから、有名企業を中心とする狭き門の人気企業に応募が集中します。当然、いくら頑張っても書類選考すら通過しない、という就活生が続出するのです。
どんな仕事に就きたいのか、どんな働き方をしたいのか。そういう考えがまとまっている就活生は、企業が繰り出す課題になんとか対応できますが、そういうことをまったく考えることなく、また、誰からも教えてもらっていない就活生は、渦の中に丸裸で放り込まれた状態になってしまいます。結果として、何をしていいのかまったく分からないため、どんな選考も上手くいかない。そういう時期が続くと、めげて途中で就活を放り出してしまうか、「頑張っても何も得るものはない」という状態になってしまいます。特に後者は危険。就活に取り組んでいるにも関わらず、会社説明会に出て書類を出すだけで終わっているのですから。ずっと就活をやってきたにもかかわらず、経験値はほぼゼロ。
そういう状態を作り出してしまうのは企業の責任だという声が聞こえてきそうですが、それは間違いです。新卒採用における企業の目的はシンプルで、自社に利益をもたらしてくれる学生を採用することです。そのために厳選採用をすることは(成果が出ているのかどうかは別にして)正しい。就活生のためになにかをするということは必要ないのです。逆に、極端にハードルを下げてでも採用したい企業も、思惑は同じ。自社に必要な数を必ず採用するという手段に過ぎないわけですから、決して就活生を救済しているわけではありません。
企業がエゴむき出して採用することは、ある意味当然のこと。大切なのは、就活生を「その中でも戦える状態にしてあげる」ことです。その役割を担っている人たちは、本来十分に自覚しているはずですが、あえて目を背けているケースも少なくありません。その状態が健全でないことは分かり切っていますが、あえてその人たちをここでは特定しません。しかし、企業にだけ責任を押し付けてしまうのはいかがなものかと、新卒採用の周辺に身を置くものの一人として、ここでつぶやいてみるのです。
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