社員のようにふるまう内定者、「内定者社員」というフシギな存在:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)
経団連が定める倫理憲章では、企業は学生に対する広報活動を「卒業・修了学年前年の12月1日以降に開始」することになっています。でも実際には、イマドキの大学生は3年の頭でサークルをやめ、就職活動に励みます。このズレの中で起きる、さまざまな問題とは?
内定者を社員のように振る舞わせる、もうひとつの理由
ただし、内定者を社員のように振る舞わせることが「結果的に」メリットになってしまったのには、もうひとつ理由があります。それは「世代間断絶」です。以前だと、同じサークルに入っていれば、大学一年生は四年生と接点を持つことは難しくありませんでした。その一年生が卒業するころには、四年生は社会人三年目あたりですから、社会人の先輩として「ウチの会社においでよ」という感じで接点を持つことも可能だったのです。しかし、いまはサークルも三年の頭あたりで終わってというケースも少なくない(=主に就活で忙しくなるからという理由なのが混乱に拍車をかけています)。となると、直近の上下一年程度しか付き合いがないことも多い。それでは、社会人が学生と接点を持つことは難しくなり、企業としても「次の母集団になる学生との接点がある内定者でいるうちに、いろいろと活動しておいてほしい」と考えてしまうのも無理はないのです。就活生から見た時、先輩訪問ができなくなって困っているという問題も、実は同じ構造から起きています。
内定者が社員のように振るまい、紳士協定の間隙を縫うように企業の採用活動や母集団形成、ブランディングに寄与することが良いのか? と問われれば、必ずしも健全な状態とは言えないでしょう。ただ、多くの人が忘れがちですが、企業にとっては「自社にとって必要な良質の人材を採る」ことが採用活動です。新卒採用とは、その対象者が就活生に過ぎないのです。健全な状態を追求することでその目的が実現できなければ本末転倒と言えるでしょう。だからといって、放置しておいてよい問題でもない。
現状の就活というプロセスにおいては、こういう「企業が抜け穴のようなものを利用する」ことはなくならないでしょう。だとしたら、プロセスにメスを入れるしかない。「何から手をつけるべきなのか真剣に考える時期だと言い出して、ずいぶん経っているな」と、新卒採用の周辺に身を置く者の1人として、ここでボソッとつぶやいてみるのです。
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