原稿を編集者になくされた赤塚不二夫のひとこと:クイズ王のすごい考え方(2/2 ページ)
赤塚不二夫の原稿をなくしてしまった編集者。しかし、翌日には原稿を印刷所に渡さなければなりません。大変な状況にもかかわらず、赤塚不二夫はまったく怒ることなく「ネームがあるからまた描ける」と言い、さらに何と言ったのでしょうか?
答え:
「まだ少し時間がある。呑みに行こう」
これはもちろん、落ち込んでいる編集者を気遣っての言葉です。呑んで戻った赤塚は、また数時間かけて同じ話を描きあげて「2度目だから、もっとうまく描けたよ」と言い、その原稿を編集者へ渡したそうです。もし私が編集者でこんなことをされたら、帰りのタクシーの中で号泣してしまうこと間違いないです!
この話には後日談があります。紛失した原稿が、1週間後にタクシー会社から赤塚不二夫宛てに郵送されてきました。「2度と同じ失敗を繰り返さないように、おまえが持ってろ」と、赤塚不二夫からその原稿をプレゼントされた編集者は、その後35年間も自分への戒めとして持ち続けたそうです。
そして、赤塚不二夫が亡くなったとき「この原稿の役目は終わった」と、フジオ・プロ(赤塚不二夫のプロダクション)を仕切る、娘のりえ子さんに原稿を戻したのです。だから、フジオ・プロには現在、『天才バカボン』の同じ回の原稿が2つ存在するのだそうです。
ファンからも出版関係者からも愛された彼の葬儀の参列者は、1200人に及びました。本当の優しさを持った赤塚不二夫が、いかに慕われていたかが分かります。
完璧な仕事や勝ち負けにこだわっていると、誰かが失敗した時についそれを責めてしまうものです。でも、完璧な人間なんていないのですから誰でもミスを犯します。本当に優しい人とは、誰かが失敗したときやトラブルが起きた際にも周囲を気遣うことができる人なのです。
世界的な思想家の孔子が、人生において最も大切だと言っていた事は「恕(じょ)」。この「恕」とは、「思いやり」のことです。彼も、思いやりこそが大事だと説いていたのです。
『ドラえもん』の「のび太の結婚前夜」の回で、のび太との結婚を不安に思うしずかちゃんへ、彼女のパパが贈る言葉です。
「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ。あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それがいちばん人間にとって大事なことなんだからね」
しずかちゃんのパパ、男の……いや人間の本当の価値を分かっています。このセリフ、きっと藤子不二雄が娘に贈りたかった言葉だったのでしょう。「仕事ができる」よりも、「優しさ」の方が大切だということ。優しさを持つのび太こそ、一生のパートナーにふさわしい相手なのです。
本日の一言:ピンチのときに相手の事を考えられる人こそが、本当に「器の大きい人」。
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