ボストン爆破テロ、誤報相次ぐ米メディアの裏舞台:伊吹太歩の世界の歩き方(3/3 ページ)
いつから米国は「誤報大国」になったのだろうか。4月15日、マサチューセッツ州ボストンで発生したマラソン・テロ事件のニュース報道のあり方に一石を投じたい。
米メディアの報道を鵜呑みにする日本メディア
米メディアの報じる情報が錯綜する裏には、従来のスタイルでの報道ができなくなっているという事情がある。インターネットの普及と、それにともなう部数、収益の低下で、大手メディアであってもネット上の「即効性」との戦いを余儀なくされているのである。それゆえに、どうしても十分に裏取りをしないまま、焦りながら入手した情報を伝えてしまう例が後を絶たない。
2012年末に発生し、27人が死亡したコネチカット州の小学校銃撃事件でも、CNNは当初、犯人を間違って報道した。間違われた襲撃犯の実兄は、自身のFacebookに「ふざけるなCNN、オレじゃない」とコメントをアップした。
ボストン警察は今回、ツイッターで2人目の容疑者の逮捕をこう伝えた。「捕まえた!!! 追跡は終わった。捜索は終わった。恐怖は終わった。正義が勝利した。容疑者は拘束された」。ボストン警察をフォローしていれば直ちにこうした情報が手に入る今、メディアの存在価値すら問われている。
メディアは今、間違いなく岐路にある。今では米国人の4割がニュースをインターネット上で見る。雑誌を読む人の割合は年々低下し、18%にまで落ちている。新聞や雑誌を読む人はどんどん減っている。もうこの流れを止めることはできないだろう。
それにしても、一連の米メディアの状況は残念でならない。米メディアはずっと、ジャーナリズムの世界では先端を行く存在だった。報道におけるノーベル賞といわれるピューリッツァー賞があり、「表現の自由」を背景に報道において世界の中心的存在であり続けた。だが残念ながら、もうそんな時代はもう過ぎ去ったようだ。2012年に国境なき記者団が発表した報道の自由ランキングでも、米国は47位に陥落している。
こうした米メディアの質の低下は、日本人にとっても無関係ではない。なぜかというと、日本のメディアは米メディアの報じることを、そのまま報じる傾向があるからだ。例えば、あのCNNが報じているのだからとか、CBSニュースが報じているなら間違いないだろうなどという意識がある。参考元を明記しないで書いてしまっていることもある。
これはつまり、例えばCNNがヘマをやっていたら、日本にも間違った情報が広まることを意味する。偏見ある報道を米メディアがしていても、そのまま日本語の記事になって日本で伝えられていることも少なくない。
日本メディアの外信部などは、米メディアのいい加減さをよく知っているはずだ。最近では、数字や固有名詞を間違えたまま報じているケースも少なくない。いつからそうなったのかは分からないが、米国が「誤報大国」になり下がったのを見るのは残念でならない。
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