ゼロより下、マイナスからでもはい上がりたい――川崎宗則の愚直な生き方:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/4 ページ)
「伏兵」と思われていた男が着実に存在感を増している。地元紙が「カワサキさん、ごめんなさい」という見出しをつけて“謝罪記事”を掲載するほどまでだ。その生きざまをふり返る。
成功者ではなく、価値ある人間になれ
当時は一部メディアから「イチローが弟分の川崎の入団をマリナーズ幹部に強力プッシュしたのではないか」とうがった見解も出ていたが、そうではない。これが川崎の「マリナーズ逆指名入団」の真相だ。
2012年春、招待選手として参加したマリナーズのスプリングトレーニングでは口の悪い番記者から「イチローのキャッチボール役」と陰口を叩かれながらも、オープン戦で実力を示し大方の予想を覆し、開幕メジャーを決めた。2012年7月にイチローがヤンキースに電撃移籍したことで袂(たもと)を分かつ形となった後も、一度もマイナーに降格することなくメジャーでプレーし続けた。マリナーズのジャック・ズレンジックGMは、こう言う。
「カワサキとはチーム編成の都合上、残念ながら再契約を見送らなければならなかったが、彼が素晴らしいプレーヤーであることは間違いない。いままで多くのメジャーリーガーと接してきたが、あそこまで熱いハートを持った選手を私はかつて見たことがないよ。代走や守備固めとして起用され続けても、彼は決して文句を言わず笑顔を絶やさなかった。あの姿勢は賞賛に値する。『Try not to become a man of success but rather to become a man of value(成功者になろうとするのではなく、価値ある人間になろうとすることだ)』。これは(物理学者の)アルベルト・アインシュタインの言葉で、私の格言だ。カワサキは、まさにこの言葉を地で行くプレーヤーだろう」
持ち前の愚直さで一躍スターダムにのし上がった川崎。現代社会では、すっかり忘れられがちな彼の生き方は大いに参考とするべきなのかもしれない。
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