BBAって何? 「少年よ大志を抱け」とあいまいな日本語:ビジネス英語の歩き方(2/2 ページ)
クラーク博士の「ボーイズ ビー アンビシャス」というフレーズは、多くの日本人が知っていることでしょう。でも、英語として読むと何だか違和感がぬぐいきれないのです。
あいまいな日本人が、日本語をあいまいにする
英語はロジカルな言葉です。近代科学と資本主義、それに民主主義という3点セットと、ロジカルな現代米英語は切っても切り離せません。
確かに日本語もロジカルに使える言葉です。ノーベル賞をたくさん受賞している日本の科学分野の研究も、ほとんどが日本語で行われています。山中伸弥教授だって、日本語で日常の研究をし、論文を書いているのです。もちろん主要論文は、英語で書いていますが。
しかし同時に、日本語は非常にあいまいでもあります。大江健三郎氏はノーベル賞受賞講演を「あいまいな日本の私」というタイトルで行いました。日常、今の日本人が使う日本語は非常にあいまいです。NHKのアナウンサー、キャスターが話す日本語だって、朝日新聞の天声人語の日本語だって、極めてあいまいです。
厳密にいうと、責任から遠くわが身を離しておきたい、結論めいたことをいって、後から追及されるようなことにはなりたくない。こういう現代の日本人の逃避傾向が、ロジカルにもあいまいにも使える日本語を、あいまいのほぼ限界領域で使うケースが増えている。それが今日の状況です。
普通の私達が話す日本語もどんどんあいまい化が進んでいます。例えば、プロ野球のピッチャーが「次回はもう少し自分の投球ができればいいかなと思います」というコメントを残します。「できればいいかな」というのは他人ごとです。「したいと思います」という意味が、どんどんあいまいな方向に変化しています。
これが日本人の英語ベタをどんどん深刻化させています。「Boys」とせっかくクラーク博士が、全員を対象にして発したメッセージを「少年よ大志を抱け」と、単数で日本語にして何の不思議も感じません。そこが問題なのです。
「あなたのは屁理屈。こういうときに日本語では、単複を区別してないんだよ。両方意味してるんだよ。だから日本語は便利だということが、まったく分かってないね」
そう思っている人がいるはずです。まあ日本語だけの世界の話なら、通じる考え方です。でも、残念ながら英語ではダメなのです。「Boy, be ambitious.」では、目の前にいる少年1人に対して言っている状況以外に、あり得ません。同時に「Boys be ambitious.」のように、呼びかけを意味するコンマを忘れたら、それはまったく意味不明の単語の羅列になってしまうのです。
札幌羊ヶ丘展望台にあるクラーク像の台座には「BOYS BE AMBITIOUS」と刻まれています(参照リンク)。こんなに立派な銅像に、意味不明な言葉が刻まれてしまっているのです。
いずれにしても、単数か複数かというのは、英語においては決定的に違います。また動詞と主語の数、時制の合致も極めて大事です。そうしたポイントを理解しないと、英語は絶対にうまくなりません。ビジネスの交渉でも、とんでもない失敗に結びつきかねないということを、ぜひ覚えておいてください。
関連記事
- 日本人英語のここが外国人に笑われている
グローバル化が進み、世界中で活躍するようになった日本人。しかし、その英語の使い方の危うさがネタになることも少なくないようです。 - ローマ字が日本のイメージを台なしにしている――ソニーが「SONI」だったら
日本語をアルファベットで表記するローマ字。ところが、このローマ字表記がくせもので、人名や社名、商品名を外国人が正しく読めない原因になり得るのです。 - 英語の細かいニュアンスを間違えないようにするテクニック
母国語でない人にとって、英語の細かいニュアンスの違いは分かりにくいもの。しかし、さまざまなテクニックを使うことで、ニュアンスを誤らないようにすることができるのです。 - 日本とは違う、住所の書き方に現れる英語圏の世界観
英語で住所を書く場合、日本式とは反対に狭い範囲から書き始めるのはご存じのとおり。住所に限らず、自分の身近なところから主張する欧米人の世界観は随所に見られます。 - 「ビジネス英語の歩き方」バックナンバー
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.