あなたの仕事は、誰かの「困った」を「良かった」に変えていますか?:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)
子どもの頃「大人になったら何になりたい?」と聞かれたことはありませんでしたか。また就活生から「働くってどういうこと?」と問われたら、あなたは何と答えるでしょうか。今回は“仕事の本質”について考えます。
ほとんどの仕事は、誰かの「困った」を「良かった」にしている
私はこういう例を出して、仕事や働くことについて説明をします。部活動の帰り、お腹が空いてどうしようもなかったとする。道の途中で一軒のラーメン屋さんを見つけました。あなたは入ってお腹いっぱいラーメンを食べた。これは、あなたの空腹という「困った」を、ラーメン屋さんのご主人はラーメンを作って出すことでお腹いっぱいに、つまり「良かった」という状態にしてあげる。その対価としてあなたはラーメン屋さんにお金を払う。それが仕事であり、働くということですと。世の中のほとんどの仕事は、この図式で成り立っていると説明しています(自著の『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』にも、この話と同様のことが書いてあります)。もう一つ、皆さんの空腹を満たすことで「困った」を「良かった」に変え、繁盛しはじめたラーメン屋さんは、丼を洗っている暇もなくなって困ってしまった、とします。その丼を皆さんが洗うことで、ラーメン屋さんのご主人の「困った」を「良かった」に変える。そして、皆さんは給料を受け取ることになりますが、これも仕事であり、働くということだ――こう説明すると、ほとんどの中学生は「なるほど!」という顔になります。
そして、この講演が「職場体験」の前だったとしたら、私は「これから出かける職場で、皆さんにぜひやってほしいこと、それはたくさんの『困った』を探してくることです。そして、それをどんな風に『良かった』に変えているかを見つけてきてください」と伝えます。そう、彼らの「何かにならなければならない」という呪縛を解き、何をすべきなのかということをシンプルに伝えることが、この時期は肝心であり、それは「夢を持て」などという正体不明の言葉や「仕事の厳しさ」なる脅しではないのです。
この話を、就活生たちにアドバイスをしている大学のキャリアセンターの人や、採用担当者たちにすると「いや、この話こそ、就活生にしてあげる必要がありますね」と言われることが少なくありません。が、もっと早い時期からこういう話をする機会はたくさんあるのです。そこで、曖昧な話をしたり、社会の厳しさなる不必要な脅しをしたり、そんな無駄をしている間に、子供はどんどん迷い道に入り込んでしまうのです。その結果の一つが就活の時期に現れてしまっているのでしょう。
「困った」を「良かった」に
「困った」を「良かった」に。この話には夢があります。ここまで夢の話を否定してきて、そう書くのは違和感がありますが。ある講演の後、それを聞いていた中学生が「自分はどんな『困った』を『良かった』にしてあげたいのかを考えることが、将来を考えることだと分かったので、よかったです」と感想をくれました。
これは、「多くの人が、世の中の『困った』を、どのようにして『良かった』にするかを考え、行動し、その結果対価を受け取るのが、仕事であり、働くということだから、まずはそれを探してみて」という、私の講演の締めの台詞に呼応した感想です。そういうことを考えながら働く人が増えるといいなと、私は夢見て、その実現のために日々仕事をし、こんなコラムも書いているのです。
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