「キャリアアップ」のために会社を辞める若手社員の本音とは:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)
「このままこの会社にいても成長できると思えないから、辞めます」……こんな言葉を聞いたことはないでしょうか。若手社会人は「お金のために働かない」のはどうやら本当らしい。それでは何のために働くのでしょうか?
次の表「仕事をする上で大切だと思うもの」を見てみましょう。
見事に、日本以外の国では「高い賃金・充実した福利厚生」が1番です。国の発展の度合いによって、2番目に大切にする項目が「明確なキャリアパス」であったり「適切な勤務時間・休日」であったり「雇用の安定性」のようですが、日本は他国がトップ2に挙げている項目のスコアよりも「良好な職場の人間関係」と「自分の希望する仕事内容」をトップ2に挙げています。高い賃金という項目は他の国の半分くらいのスコアになってしまっています。
ちなみに、米国・ブラジル・ドイツ・ロシア・オーストラリアでも「高い賃金・充実した福利厚生」がトップになっていて、日本の若手社会人だけが「働くのは金だけじゃない」という傾向を表してしまった結果になっているのです(サンプル数がそれほど大きくないので、「実証した」とまではいえないですが)。
結論は「日本は豊かだから」なのか?
この結果を見て「日本は豊かなのだな」と思う人は多いと思います。ただ、人事担当者たちは焦るべきなのかもしれません。冒頭に書いた通り、「キャリアアップしたい」といって退職する人たちが多いと言われているのに、このデータを見ると「明確なキャリアパス」が仕事をする上で大切である、と挙げている人は他の項目に比べて多くありません。実際は「自分の希望する仕事内容」も仕事をする上で大切だと思っている人たちが「仕事内容などに不満」があって辞めてしまっていることが見て取れます。キャリアアップという言葉の裏に隠された、ホンネの部分を見落としてはならないようです。
転職したいという人たちの相談に乗り、辛抱強く話を聞いていると、結局は「何が何でもそこから離れたい」という本音にたどり着きます。現状に不満があるから場所を変えたい、という感じでしょうか。ただこれは、どうしても「我慢が足りない人」だと思われがちです。しかし「良好な職場の人間関係」を、働く上でもっとも大事にする日本の若手社会人は、職場であつれきを起こしてまで改善を求めるよりは、自分のやりたい仕事内容を提供してくれる、今の自分と「合いそうな」企業に、キャリアアップなる言葉で真意をオブラートに包んで、そっと移っているのかもしれません。
「なぜそうなってしまうのか」というほどではありませんが、逆の視点から見た調査データから、興味深い現象を発見しました。が、それは次週に。
関連記事
- サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「真面目に勉強しているのに評価されない」就活生には2タイプいる
「授業をサボって遊んでばかり、試験前にノートを借りて済ます要領のいいヤツばかりが内定をもらう。自分は真面目に勉強してきたのになぜ……」あなたの周りにそうボヤく就活生はいませんか。「自分は真面目」と自称する就活生が陥りがちな「無い内定」のワナとは? - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:あなたの仕事は、誰かの「困った」を「良かった」に変えていますか?
子どもの頃「大人になったら何になりたい?」と聞かれたことはありませんでしたか。また就活生から「働くってどういうこと?」と問われたら、あなたは何と答えるでしょうか。今回は“仕事の本質”について考えます。 - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「夢を持て」という言葉が罪作りな理由
「夢を持つことは大切だ」さらに「願えばかなう」――そう言う人は多いですが、自分の将来について考え始めている子どもに対してそう言うことは罪作りだとサカタさんは言います。その理由は……。 - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:「いつかは転職したい」では転職できない理由
「いつかは転職したい」――長く働いているビジネスパーソンなら、1回くらいは考えたことがあると思います。しかし仕事柄転職相談を頻繁に受けるサカタさんは「それでは転職できない」といいます。転職市場において、もっとも大事な価値とは? - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」:35歳で「初めて就職する」ことの困難さを、改めて考えてみた
先日、ある女性の就職相談に乗ったというサカタさん。芸術系の大学を卒業し、その道に進んだ彼女は現在35歳。別の道を歩もうと正社員としての採用を目指し就職活動を開始したものの、世間の風は冷たかったといいます。 - サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」バックナンバー
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.