コラム
ユーロ圏の銀行に経営破たんのきざし:藤田正美の時事日想(2/3 ページ)
欧州の銀行のPBRは1を割っている。割安というよりも投資家が怖くて手を出せないともいえる。日本の銀行がバブルがはじけて以来、不良債権処理が大変だったのと同じ状況だ。
欧州の銀行の株価純資産倍率(PBR)は、1を下回っている。「PBR1倍割れ」ということは株価が割安という判断もできるが、投資家が怖くて手を出せない状況という見方もできる。イタリアの大手銀行ウニクレディトのPBRは0.34にしかすぎない(株価が1株当たり純資産の34%ということだから、もしここで潰れても投資した資金の2倍近いカネが返ってくる計算だ)。銀行がこれだけリスクの高い企業になってしまったのは、それらの銀行が大量の(自国の)国債を保有していることや、住宅価格の値下がりで住宅ローンが焦げ付いていることが背景にある。
ゾンビ企業を生かし続けた日本の銀行
ちょうど日本の銀行が1990年にバブルがはじけて以来、不良債権処理が大変だったのと同じ状況だ。このころ銀行は貸し倒れがあまりに巨額になることを恐れて、ゾンビ企業に資金を融通し続けた(利息さえ払ってもらえれば、不良債権にしなくてすむからだ)。監督当局もそれを容認してきた。しかしそれでも1998年には北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行などが経営破たんに追い込まれた。そして金融の大再編が行われた。
もしユーロ圏の銀行に不良債権が積み上がって、経営破たんということになると、また世界経済が大きく揺れることは間違いない。IMFの見通しでは2014年のユーロ圏の成長率見通しは0.9%ということになっているが、もし中国経済が一段と減速すれば、またさらに下方修正されるかもしれない。
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