コラム
ユーロ圏の銀行に経営破たんのきざし:藤田正美の時事日想(3/3 ページ)
欧州の銀行のPBRは1を割っている。割安というよりも投資家が怖くて手を出せないともいえる。日本の銀行がバブルがはじけて以来、不良債権処理が大変だったのと同じ状況だ。
おりしも、中国はシャドーバンキングの残高が130兆円とも600兆円ともいわれ、これが火種になる可能性もある。この巨額の資金がいっせいに逃げだそうとすれば、それだけでパニックになりかねない。世界第2位の経済大国である中国だが、これまでの「放漫経営」のツケが回ってくる可能性もあるのだ。
いつ米国は世界経済を引っ張る機関車国に戻るのか?
別に危機を煽っているわけではない。米国はいちおう景気回復の軌道に乗ったように見える。FRB(連邦準備理事会)のバーナンキ議長の「出口」発言にしても、それを言い出せるほど状況がいいということでもある。しかし、米国以外ではまだ力強さはない。
日本の2013年の成長率は2.0%と、4月よりも0.5ポイントも引き上げられた。アベノミクス効果が大きい。ただIMFも日本がこれで本格回復に向かうとは見ていない。2014年の成長率見通しは、1.2%と再び低下する。それは「世界経済全体が減速しているからだ」とIMFリポートは説明している。
新興国の成長率が落ちて、牽引車を失った世界経済が、今後どのように動くのか。米国がいつ機関車国に戻るのか。日本の周りはいつもにも増して、リスクがたくさんある。参院選に勝っても、安倍首相が枕を高くして眠れるわけではない。
関連記事
- ユーロ圏の不振は経済だけの問題ではない
ユーロ圏の不振にたいして、EUメンバーの英国は脱退を視野に入れ始めた。ユーロ圏からの脱退をほのめかす国もある。これが現実のものとなったとき、世界経済はどうなってしまうのか。 - 中国経済にちらつく第2の“リーマンショック”の影
中国のシャドーバンキングによる「信用バブル」が叫ばれ、銀行間の短期金利が乱高下している。もし中国経済がこの問題で一時的であれ停滞することになると、アベノミクス効果はたちまち打ちのめされるだろう。 - 参院選後を読む、安倍首相は救国の指導者となるか
7月の参議院選挙は自公圧勝に終わるだろう。同時に民主党は、国民から野党としてさえも信認されないだろう。選挙後の日本はどこへ向かうのか。 - 世界経済における中国の位置付けが変わりつつある
2013年4月の工作機械受注額は12カ月連続で前年割れで、特に中国向けが58%減という数字を示した。中国製造業の競争力は明らかに落ちており、「世界の工場」としてはピークを過ぎたのだ。 - 藤田正美の時事日想バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.