ネット食品宅配サービスは成功するか? 失敗事例に学ぶ:INSIGHT NOW!
ネットを使った食品宅配サービスが流行しています。過去の失敗例の二の舞にならないように、消費者の購買特性を理解したサービスを考える必要があります。
著者プロフィール:渡部弘毅(わたなべ・ひろき)
経営コンサルティングのISラボ代表。日本ユニバック(現日本ユニシス)、日本アイ・ビー・エムなどを経て2012年5月、ISラボ設立。経営戦略、経営企画およびCRM領域にてコンサルティング活動中。ワクコンサルティングのパートナーコンサルタントとしても活動する。
インターネット企業の食品宅配サービスが主婦や働く女性に人気のようです。交流サイト(SNS)やミニブログとの連携で楽しみながら食品を注文するサービスが登場したり、楽天は生鮮品を含む食品を仕入れてスピード配送したりします。ヤフーはスマートフォン(スマホ)からも簡単に注文できる仕組みを導入。各社はネット通販などで培ったノウハウを生かしてサービスを競っています。ネットスーパー等も含めて、今後の大きな市場と期待されています。
一方、この領域でのビジネスの失敗例として有名なのは米国のウェブバン(webvan.com)です。1996年に鳴り物入りで事業を開始して、多くの出資金を募って大変素晴らしい最新のネットの仕組みや物流センターを構築したにもかかわらず2001年に倒産しました。
理由は諸説ありますが、そのひとつに消費者の購買行動を把握していなかったという根本の失敗という説もあります。日常の食品関連の消費者の購買行動は非計画購買と言われています。すなわち店であれば入店してぶらぶら見回ってから購入品を決定するというスタイルです。
この消費行動をネット注文で実現しようとすると、何日か前、あるいはその日の朝とかに購買するものを計画する必要があります。ほとんどの消費者が日常食品の購買を計画的に決定するのに違和感があったということですね。
当時のウェブバンはユーザーの満足度は高かったようですが、顧客数があまりにも少なかったようです。つまり食品の計画購買ができる消費者には非常によくできたサービスだったというわけです。
時代もめぐり消費者の購買行動の変化や新しい技術も加わり、単純な買い物難民のための救済策ではなく、生活者の主要インフラとして浸透していくためにはさまざまな工夫が必要ですね。
私の考えではウェブバンの失敗を繰り返さないように、消費者に品選びをさせない「頒布型モデル」がいいのではないかと思います。毎回の発注の金額を決めておいて、お勧め食材と料理のレシピを一緒につけて発送するといったモデルだと、いちいち考えて購入する必要もなく忙しい主婦にいいのではないでしょうか? レシピはネットと連動してもいいですね。すでにこんなサービスはあるような気もしますが。(渡部弘毅)
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