コラム
動き出す消費増税と社会保障改革、安倍首相が歩むいばらの道:藤田正美の時事日想(3/4 ページ)
予想どおり自公の圧勝で終わった参議院選挙。ねじれが解消したとはいえ、安倍首相の前にはどれも一筋縄ではいかない問題が山積している。
先進国中最悪の借金を抱えていても、日本国債が売り込まれない理由のひとつは、日本にはまだ増税余地が大きいからだ。国民負担率で比較すれば、先進国では米国や豪州に次いで低い(参照リンク)。国民所得比で38.5%である(ちなみに米国は30.9%、豪州は36.6%だ)。これに対して英国が47.3%、ドイツが50.5%、フランスは60.0%、デンマークは67.8%である。
だから明確な政治的意思さえあれば、そして強いリーダーシップがあれば、税金を増やす余地はあると考えられている。日本国民もある程度の増税は仕方がないと思っている人が多い。それはさまざまな世論調査からも明らかだ。
それだけにもし相当の理由なしに(例えば浜田教授がいうように「ちょっと心配」というような理由で増税を先延ばしすれば、それこそ日本政府が発行する国債は売れなくなるかもしれない。長期金利の上昇である。
複数税率をめぐる戦い
消費税に関してもうひとつの問題は、複数税率だ。公明党は3ポイント引き上げる2014年4月導入でも複数税率を主張していた。自民党はその提案を時間切れを理由に切って、2015年10月の2ポイント引き上げ時に検討することにした。
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