動き出す消費増税と社会保障改革、安倍首相が歩むいばらの道:藤田正美の時事日想(4/4 ページ)
予想どおり自公の圧勝で終わった参議院選挙。ねじれが解消したとはいえ、安倍首相の前にはどれも一筋縄ではいかない問題が山積している。
複数税率の最大の問題は、何を対象に複数税率にするかということだが、そうなると新しい税率の適用外を狙って、さまざまな運動が展開されるだろう。そして軽減税率を適用されるかどうかが、その商品やサービスの価格競争力を左右するから、品目の見直しのときは、ロビー活動が活発化する。
社会保障改革はどうするのか?
上に挙げたようなさまざまな問題のうち、筆者が最も重要だと考えるのが社会保障改革だ。医療、年金、介護である。3学年で800万人以上の人間がいる団塊の世代。あと5年経つとこの人たちがほとんど70歳代になる。ということは今のままでいけば医療費が暴騰するということだ。そうなったらとても今回の消費税の引き上げだけでは間に合わない。
おおざっぱな数字だが、日本の総医療費はおよそ40兆円程度。その半分以上は65歳以上の人たちが使っている。70歳以上ということにすると45%程度だ。つまり歳を取ってくると病院のお世話になることが増えてくるという当たり前のことなのだが、ここに団塊の世代が入ってくるとなると、毎年放っておけば社会保障関連費は毎年1兆円を超えるスピードで増加する。これまでは何とか乗り切ってきたが、団塊の世代がこの年齢に差し掛かると、ことはそう簡単ではない。
つまり社会保障の給付引き下げというのが、安倍内閣に求められているのである。そうしなければ保険財政がもたないからだ。医療費も同様だ。あらゆる人々(もちろん保険料を払っている人々)に「平等」な医療サービスを提供するということにばかりとらわれすぎていないだろうか。
しかしこうした問題を持ち出しただけで、党内に議論を呼ぶことは確実だ。それを果たして安倍首相がまとめていけるのかどうか。それこそが安倍首相にとって「試練」となるだろう。
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