「ブラック企業」と呼ばれないために今できること:INSIGHT NOW!(2/2 ページ)
以前なら「体育会系だねぇ」で済まされていたような会社まで、今やある日突然に「ブラック企業」扱いされかねない。自業自得の側面もあるが、よほど経営者が自覚を持たないと「明日はわが身」である。
新人の採用・教育のコストはばかにならず、こうした定着率の低さはそれだけでもったいない損失である。しかしそれ以上に、小生はこの会社の未来を心配している。今はまだ表面化していないが、いまどきの「ブラック企業」として非難される条件を十分に備えているからである。
若手から見るとその会社は、(1)注文を取ってくるまで帰ってくるななどと言われ「拘束時間が長い」、(2)歩合は高いが受注しないと得られない。それに対し固定の「給料は安い」、(3)営業所長からは、営業成績が上がらないことで「叱責はされるが有効な助言・指導はない」、(4)結果として「多くの若手が辞めていく」、といった具合である。
その企業の名誉のために付け加えておくが、同社は何ら違法行為を行っているわけではなく、本来の「ブラック企業」の定義には当てはまらない。しかし今や就職時期にある学生たちにいわせると、こうした若手が定着しづらい企業は押し並べて「ブラック企業」の資格を満たしているのである。
いずれそのうちに、辞めた元社員が2ちゃんねるや自分のブログ、もしくはFacebookなどにこの実態を書き込むだろう。それにコメントで拍車を掛ける者、知人に転送・シェアする者が出て、パンデミックのようにある時を境に急増殖する。そうなるとこの会社も今どきの「ブラック企業」リストに仲間入りしてしまう。すると途端に入社希望者が減り、今まで何とかつながっていた新陳代謝のサイクルも途切れる。いずれネットに疎いはずの顧客層にもその評判が伝わり、競合に商売を奪われてしまうだろう。
同社の経営企画部門の人たちには「苦い良薬」を経営トップに何とか飲んでいただくよう、勇気を振り絞って「猫に鈴をつけて」いただきたかったが(小生にやらせてもらえば説得する自信はあったが)、とりあえずは先送りとなった。さて今後はどうなるだろう。(日沖博道)
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