投資一辺倒の中国経済は砂上の楼閣:藤田正美の時事日想(2/3 ページ)
世界経済をリードしてきたBRICsの先行きが怪しい。特に中国の場合、GDPの半数以上を投資が占めており、限界に突き当たり始めている。中国経済が破たんしたとき、日本経済も無傷ではいられない。
投資一辺倒の中国経済は砂上の楼閣
クルーグマン教授の議論は、「投資一辺倒で成長してきた中国経済は限界に突き当たるはずだ」というものだ。日本などではGDPで最も大きな割合を占める(60%超)のは家計の消費である。米国では70%にも達する。しかし中国では国民の消費よりも投資のほうが大きく、GDPの半分を占める。
問題は、この投資が何に回っているのかということだ。最近、よく見かけるようになった中国のシャドーバンキング(参考記事)。高利で投資家(個人や国有企業など)を集めて、それを地方政府のインフラ整備に融資するという形をとる。高利というのは中国の銀行が預金者に付与できる最高の金利よりも高い金利ということだ。
一方で、地方政府が行うインフラ整備は、そこから得られる利益が限られているのが特徴だ。地方政府はこれまで土地を収用し、集合住宅などをがんがん建設してきた。これによって、GDPが上乗せされるという部分もあった。しかし米国のサブプライムローンの破たんが住宅価格の値下がりに始まったように、地方政府のインフラ整備が遅れ、それによって地方政府の資金繰りがつかなくなると、個人や企業から集めた資金のうち銀行の正規ルート以外のルートで貸し出された資金が焦げ付く恐れがある。
そういったルートで貸し出された資金の残高を、中国政府は130兆円としたが、600兆円とする試算もある。600兆円というと中国のGDPを上回る金額だ。もしこの金額がいっせいに引き揚げられたりすれば、デトロイトではないが、中国の地方政府自体が破産状態になってもおかしくない。
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