中国の“リコノミクス”、抵抗勢力をねじ伏せる覚悟はあるか?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
中国からまた暗いニュースが流れてきた。同国の成長率が政府の公式発表よりも大きく鈍化しているのではないかという指摘だ。輸出主導、投資依存型の高度成長からの転換期にある中国の今後は?
李首相に守旧派抵抗勢力を切り捨てる覚悟はあるか?
これから注目しておかなければならないのは、こうした粉飾と合わせて、実態が見えにくくなっている金融、いわゆる「シャドーバンキング(影の銀行)」だ(参考記事)。ここでも地方政府の債務残高が実質的にどのくらいあるかが分からなくなっている。
李克強首相が主導する経済政策は「リコノミクス」と呼ばれている。李首相はこれまでの信用バブルを抑える方針だが、中央銀行が資金供給を抑えれば銀行間金利がはね上がる。それは先ごろ「実証」されたばかりだ。しかもこうした締め付けは、体力の弱い銀行を「意図せぬ」破綻に追い込んでしまうリスクもある。そしてもし取り付け騒ぎでも起きれば、社会不安になる可能性もある。中国では社会保障が未整備ということもあり、しかも一人っ子政策によって親の面倒を子どもがみるといってもそう簡単ではないことも加わって、貯蓄率が高いからだ。
輸出主導型、投資依存型で高度成長を遂げてきた中国経済は、いま内需主導型、消費主導型への転換を図ろうとしている。それがリコノミクスだが、アベノミクスと同じく、そのためには既得権益との戦いを避けるわけにはいかない。近年の日本では、改革について最も実行力があったのは小泉首相だ。それはもちろん意思の問題でもあるが、同時に「失うもの」があるかどうかの問題でもある。その意味で、安倍首相がどれだけ「改革」を説いても、いまひとつ得心できないのは、政治の名門出身の安倍首相には「失うもの」が多すぎるからだ。
同じように中国の場合、習近平国家主席は中国の主流派中の主流派だ。もし「守旧派」が本気で抵抗してきたとき、それを切り捨てるだけの覚悟があるのだろうか。そこがいま試されている。そしてその答は数年たたないうちに出るだろう。その答次第では、日本への影響も小さくないし、大きな波が来れば、アベノミクスも危ういと思う。その波の影響を少しでも軽くするためには、日本自身が改革によって筋肉質になるしかない。最初のテストは消費税とTPP、それに社会保障改革だと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
投資一辺倒の中国経済は砂上の楼閣
世界経済をリードしてきたBRICsの先行きが怪しい。特に中国の場合、GDPの半数以上を投資が占めており、限界に突き当たり始めている。中国経済が破たんしたとき、日本経済も無傷ではいられない。
中国経済にちらつく第2の“リーマンショック”の影
中国のシャドーバンキングによる「信用バブル」が叫ばれ、銀行間の短期金利が乱高下している。もし中国経済がこの問題で一時的であれ停滞することになると、アベノミクス効果はたちまち打ちのめされるだろう。
安倍首相は痛みを伴う改革を断行できるのか
英エコノミスト誌の最新号表紙は、スーパーマンに模した安倍首相が空を飛んでいるものだ。官僚の「天敵」たる規制緩和を実行できるのか。
動き出す消費増税と社会保障改革、安倍首相が歩むいばらの道
予想どおり自公の圧勝で終わった参議院選挙。ねじれが解消したとはいえ、安倍首相の前にはどれも一筋縄ではいかない問題が山積している。- 藤田正美の時事日想バックナンバー