Q. 死後にケータイの履歴やメールを見られたくないんだけど……:古田雄介の死とインターネット 一問一答
死後に中身をチェックされる可能性は、PCよりもケータイやスマホのほうが高い。しかし、打てる手は限られているのが現状だ。
古田雄介のプロフィール:
1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。ネット上の死の現状をまとめたルポ『死んでからも残り続ける「生の痕跡」』(新潮45eBooklet)を各種電子書籍サイトで販売中。ブログは「古田雄介のブログ」。
A. 遺品として最終的に頼りになるのはパスコードロック
死後にデジタルデータを見られたくないなら、ケータイやスマートフォンはPC以上に気にかけるべき存在だ。
国内初の遺品整理専門会社キーパーズを2002年に設立した吉田太一社長は、「PCに関しては遺族があまり詳しくなくて、それほど興味を持たれないケースが多かった印象です。対するケータイやスマホは利用者の年代が格段に広く、ご年配の遺族が故人の端末を操作して着信やメール履歴をチェックするということは珍しくないですね。PCと違ってパスワードがかかっていないことが多いので、情報にアクセスする難易度も低いんですよね」と過去を振り返って解説する。
使いこなしている年代層が広いうえに、セキュリティも甘く、直近の人間関係が手っ取り早く調べられる。悲しみに心を痛めながらも葬儀の段取りなども考えなければならない遺族にしてみれば、これ以上なく速効性に優れた遺品なのだ。
そのケータイやスマホの情報を漏らさないようにするなら、相応の覚悟で対策を練る必要がある。
スマホならセキュリティアプリによって、隠したいファイルをロックするという手も使えるが、通話やメール履歴まで垣根なくカバーするのは厳しい。やはり、多くの端末が備えているパスコードロック機能を使って、アクセス自体をブロックするのがもっとも確実かつ汎用的な対策といえるだろう。iPhoneや多くのAndroid端末は、パスコードの入力を10回誤ると端末自体が初期化されるし、その他のケータイでも各種履歴が見られるのを防ぐことはできる。クラウドサービスやメモリカードなどのバックアップデータからサルベージされる可能性も残るが、着信履歴から何まで明け透けになる事態は避けられるだろう。
実際、公用私用に関わらず、職員が所持する端末にパスコードロックを義務化している企業や団体は多い。紛失した際や盗難に遭ったときに顧客の情報漏えいを防ぐ意味合いが強いが、個人が秘密を守る効果も相応に備えている。
※注:習慣化できなければ、絵に描いた餅
ただし、義務の縛りがないのに、メール着信や通話、アプリ操作のたびに、毎回パスコードを入力しなければならないのは面倒だ。普段の手軽さは極力犠牲にしないように意識して、習慣化できる範囲までパスコードの設定を緩める必要がある。iPhone 4Sで一例を示そう。
フリーランスで活動している筆者が上記の設定にして1カ月使ったところ、パスコードの入力は朝から1〜2回という日がほとんどだった。この原稿を納品して、個人的に設定の必要性がなくなった現在も普通にそのまま使っている。個人差があると思うが、一般に、頻繁に端末を操作する人=遺品としての端末の価値を高める人ほど4時間空く機会は少なくなるので、必要性が高いほど習慣化しやすくなる側面はあるだろう。
4時間という設定は日常生活では長めでも、死後の時間の流れでのなかでは無視できるほど短い。端末が自動ロックされて4時間以内に自分が死亡し、端末が家族の手に渡って、家族が早速履歴などを調べる気になるというケースは滅多にないだろう。
もちろん、パスコードロックによって、家族が必要な情報を得るのに遠回りしなければならない事態を招く可能性もあるが、生きている間にその事態、その迷惑を想像することも有意義だと思う。
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