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「はだしのゲン」がバカ売れ、仕掛けたのは誰か?:窪田順生の時事日想(4/4 ページ)
小学校での閲覧制限を受けて「はだしのゲン」が前年の3倍売れて在庫がなくなったという。国による制限は、日ごろ注目されない人を喜ばせるだけだ。
なかなか花開かない作家志望の男に、「こんな感じにしたらもっと売れますよ」とそそのかした者がいなかったか? なんて考えると、中沢啓治さんにも人権屋の影がちらつく。
最初に描いた被爆体験をベースにした作品『黒い雨にうたれて』は、被爆青年が米国人を殺していくというストーリーだ。その次に描いた『黒い河の流れに』も、被爆して余命いくばくない女性が娼婦になって米兵に復讐をするという戦争に翻弄された人々の悲劇に主眼が置かれる。週刊少年ジャンプで『はだしのゲン』の連載がはじまった当初に描かれたのも「原爆の恐ろしさ」である。
それが日本兵が妊婦を切り刻んだり、と雲行きが怪しくなってくるのは『市民』とか『文化評論』という人権屋のみなさんがよくご覧になる雑誌に移籍してからだ。ああ、そういえば「悪魔の飽食」も『赤旗』で連載されていたんだっけ。
「作品」の体でのプロパガンダはなにも人権屋だけの専売特許ではない。ワザと火をつけて大騒ぎにするという放火魔みたいな人が海のむこうではウジャウジャいる。
日本人からも人気のあるアンジェリーナ・ジョリーが、旧日本軍の捕虜収容所で性的サディズムのワタナベという伍長に米国人男性が虐待されまくるというベストセラー小説を「感動した」と映画化するらしい。反日映画だから公開中止にしろなんて騒いだら、そここそ相手の思うツボだ。この手のものこそ、『はだしのゲン』の教訓を生かしたい。
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