バイトテロと「自分らしく生きる」ことの近くも遠くもない関係:サカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)
バイト先でいたずらを撮影、Twitterで炎上するバイトテロ。「相手の立場に立って考えろ」と大人は思いますが、「考えても分からない」若者が一定数存在するのでは? とサカタさんは指摘します。
相手の立場が理解できないと、内定が取りにくい?
以前、キャリアの研究者とディスカッションしていて「どんな人が内定を取りやすいのか」という話になりました。データを分析しするといくつかの傾向があったのですが、ある因子が目に留まりました。それは「多様性」というキーワードです。
細かいことは省きますが、要は「世の中にはたくさんの人がいて、いろいろな考えを持っている」ということを「理解」しているタイプの就活生は内定が出やすい、つまり就職できるという結果だったのです。自分と違う考えを持っている人たちを許容できない、もしくは相手のことを想像できないタイプは、内定が出にくかったと。
こう書いてしまうと「それって空気を読んで発言しろということ?」と言う人がきっといるでしょう。確かに「相手の立場になる」というワードで検索してみると、“空気を読む”的な話につながっているケースは少なくありません。しかし本来、相手の立場になるということは、顔色をうかがったり、それこそ空気を読んだりすることとは違うはずです。
ちなみに先ほどのディスカッションは、多様性のスコアは、わりと簡単な訓練で上げることができるという興味深い話に続きます。そのトレーニングとは、新聞の記事を読んで、みんなで感想を述べ合う、という行為を定期的に繰り返すだけ。そうすることで、世の中には、同じことを違う視点で捉えたり、自分とはまったく違う意見を持ったりする人が「いる」ということが認識できるようになる、と。それを知るだけで、その人の多様性が高まり、内定も取りやすくなる可能性があるというのです。
「人それぞれだから」という言葉を、日常生活の中で私たちは幾度となく口にしています。だからこそ、それを許容しあって「相手の嫌がることをしない」心配りが必要だったはずです。人それぞれだから自分勝手でいいとか、相手の立場になることとは空気を読んでいる(そもそもこの言葉ってネガティブな印象を産んでいますよね)ことだから、ちょっと恥ずかしいことだ、という、それこそ“妙な空気”が「自分らしさ」という、それこそ、就活や転職領域においての王様のような言葉などとリンクしてきて、モヤモヤした気分になってしまう今日この頃なのです。
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