シリア空爆で「米国は世界の警察官ではない」と言いだしたオバマ大統領の真意とは?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
シリアが化学兵器の備蓄を申告した。今後、少なくとも半年以上の時間をかけて、検証と破棄に向けたプロセスが動くだろう。ホッとしたのは、アサド大統領とオバマ大統領の2人だ。
もともと米国にとってシリア危機はやっかいな問題だった。「化学兵器の使用はレッドラインを越える」と警告をしていたとはいえ、オバマ大統領にとってシリア介入は選択肢にない。その理由はいくつか考えられる。1つ目に、大産油国であったイラクなどと違って、シリアが米国の国益とりわけエネルギー問題と直接関係があるわけではないこと。2つ目に、シリアが中東のひとつの重しになっている状態を崩せば、中東情勢がいっそう不安定になるのが目に見えていたこと。3つ目に、エネルギーに関しては米国でシェール革命が起こっていて、中東が死活的に重要ではなくなったこと。
その意味ではオバマ大統領が「空爆」という提案をしたのは、介入したくないが放ってはおけない、その狭間での選択だった。しきりに「罰を与える」という言い方をしたのもそれを裏付ける。もともとオバマ大統領は、2008年の大統領選予備選挙で、当時のライバル、ヒラリー・クリントンと違ってイラク戦争に始めから反対していたことを売りにしていた。
そしてその著書の中で、「自分の子どもが戦争に行くことを考えれば、簡単に戦争の決断などできるわけがない」という主旨のことも書いている。1998年にケニアとタンザニアの米大使館がアルカイダのテロリストによって爆破されたことの報復として、当時のクリントン大統領がアフガニスタンのテロリスト養成キャンプとスーダンの化学兵器製造工場(この工場は攻撃当時、すでにアルカイダの手を離れており、民間向け粉ミルク工場となっていたことが事後に発覚する)を巡航ミサイルで攻撃した。今回のシリア空爆という計画は、このクリントンの「中途半端」な攻撃とも似て、介入したくないという意思の表れだった。
2013年9月10日の米国民に対するシリア問題についての演説で、オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と言い切った。
米国の国益に関する場合や、9.11のように米国自身が攻撃を受けた場合は、何の躊躇(ちゅうちょ)もなく武力行使に踏み切るだろうが、何か問題があるからといって、すぐに米軍が駆けつけるということはないという意味である(これに関連して、尖閣諸島で仮に軍事的な紛争が起きた場合、米軍が来ないかもしれないというような議論があるが、それは違うと思う。尖閣諸島が日米安保条約の対象であることは米国もしばしば言明しているところだからだ)。
シリアの化学兵器問題は、とりあえず舞台が国連に移り、そして解決までに少なくとも半年ぐらいは時間がかかる話になった。その間、シリアの内戦がどう推移するのかは見守るしかない。ただはっきり言えるのは、アサド政権の崩壊を望んでいる国は、安保理常任理事国の中にはいないということである。
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