「続・半沢直樹」は映画か? TVか?:公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」(2/2 ページ)
最終回の瞬間最高視聴率が50%を超え、今年を代表するドラマとなった『半沢直樹』。続きが見たいという視聴者の思いも高まっています。今回は『半沢直樹』の続編を制作すると仮定して、映画とドラマの両方で分析してみましょう。
ドラマは「広告料」を関係者が分配するビジネス
一方のドラマはどうでしょうか? ドラマの収入の元となるのはご存知の通り「スポンサー収入」ですが、実はこのスポンサー収入には、2つのタイプがあります。
1.タイム広告
「日曜日の21時〜」という時間枠で広告を出す権利をスポンサーが買い取る方式です。半沢直樹は「日曜劇場」という日曜日の21時からの枠での放送でしたが、この枠は昔から東芝などのスポンサーが広告を出しています。
詳細は調べられませんでしたが、多くの場合、ドラマの制作費はこのタイム広告から得られる収入の範囲内でまかなうことになっているようです。
2.スポット広告
上記とは異なり「時間枠を問わず、一定の視聴者の目に留まるまで、広告を出し続けてほしい」というのがスポット広告です。テレビCMでは、タイム広告枠のスポンサーのCM以外に、適宜このスポットのスポンサーのCMが流れます。
テレビ局から見れば「一定の視聴者の目に留まるまで」何度でもCMを打つ必要があるため、高視聴率の番組を作ることができれば、より効率的に広告料を得ることができます。 テレビ番組は「タイム広告」という形であらかじめ時間枠を買い取ってもらい、その中で制作が行われるものです。したがって、映画の制作とは異なり、ある程度の収入を想定した上でドラマの制作ができるという利点があります。さらに、高視聴率をたたき出せば、スポット広告を効率的に消化でき、更なる広告料を得ることができます。
それでも、欠点がないわけではありません。タイム広告枠を消化した残りの部分でスポット広告を展開するため、広告料の伸びしろにはおのずと限界がありますから、映画ほどの収入は見込めないかもしれません。
また、「日曜日の21時〜」という枠は他局でも特番を組みやすい時間枠です。例えば、年末特番シーズンで「TBSで半沢、フジテレビですべらない話」と言うことになった場合、半沢を録画して「すべらない話」を観る、という人もたくさんいるのでは? と思います。
そういった他局との争いに勝たなければならないという点で、テレビには映画にはない特有の厳しさがあります。映画の場合は競合する作品がある場合でも「両方観る!」という選択肢がありますが、リアルタイムでの視聴率が広告料を左右するテレビの場合は、その理屈は通用しないわけです。
結論:まーやんは「ドラマ」推し
映画とドラマを比べたとき、ハイリスク・ハイリターンの映画と、ミドルリスク・ミドルリターンのドラマ。一言で言うとそういう整理ができます。
半沢直樹の場合、既に今回のドラマで十分過ぎるほどの知名度を得ています。しかも、次回作の原作にあたる『ロスジェネの逆襲』はすでに出版されており売れ行きも絶好調ですから、映画化・ドラマ化した場合の話題性に事欠くことはありません。つまり、リスクを気にせずに思い切った制作ができるため、映画になったときもかなり面白い作品になるだろうと思います。
他局の成功例としては、フジテレビの『踊る!大捜査線』シリーズは、映画化で大成功を収めました。警察モノのドラマの場合は空撮や爆発など、ダイナミックな撮影で観客を楽しませてくれましたが、派手なアクションや特撮の必要のない経済モノのストーリーの場合、制作費に比例して面白さが増す、という話にはなりにくいのではないか? というイメージを私自身は抱いています。もちろん制作費を抑えて、利益率の高い作品にするという手もありますが、映画にかかる費用は制作費だけでなく、上記の通り配給や上映にもコストがかかるので、あまりスリムな運営もできない……と言う事情を考えると、旨みは多くありません。
もちろん、私の結論が絶対ではありません。ココでは分析し切れなかったいくつかの事情を踏まえて、最適な媒体で続編を出すことになるはず。ですが、今ある情報を使う限りでは、映画にシフトする優位性はあまり見出せないかなぁ、と思っています。
ともあれ、あんなに面白かった『半沢直樹』。続編でも、主人公たちの更なる奮闘を楽しく観たいものですね。(眞山徳人)
※この記事は、誠ブログの公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」:「続・半沢直樹」は映画なのか?TVなのか?より転載、編集しています。
誠ブログでは、ブログを執筆してくださるブロガーを募集中です。詳細については、「誠ブログとは?」、「FAQ」をご覧下さい。
関連記事
- 『半沢直樹』の世界、外国人に英語で説明するには何といえばいい?
最終回の視聴率が42.2%と大ヒットとなったドラマ『半沢直樹』。このドラマが描く日本の銀行社会を外国人に説明しようと思うと、ちょっと大変かもしれません。「同期」「出向」など英訳が難しいキーワードが多いのです。 - 年収1000万円超のビジネスパーソン、『半沢直樹』の登場人物の中で、上司にしたいのは誰?
ドラマ『半沢直樹』の登場人物があなたの上司になったと仮定した場合、上司にしたいのは誰ですか? 高年収のビジネスパーソン(平均年収1077万円)に聞いた。ビズリーチ調べ。 - 手書きで倍返しスキルを身に付ける!? 『半沢直樹』を図解する
「やられたらやり返す。倍返しだ!」で大ヒットとなったドラマ「半沢直樹」。今回はドラマ「半沢直樹」の人物相関図を図解してみます。 - なぜサッカーで八百長が起きるのか――不正のメカニズム
先日、ICPO(国際刑事警察機構)主催の、とある会議が開催されました。議題は「サッカー界における八百長の防止対策」。八百長といえば、少し前に日本でも大相撲が話題になりましたが、どうやらサッカー界のそれは大相撲の比ではないようです。 - なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか
「アベノミクス効果で景気が上向き」という報道がある一方、景気が良くなったという実感はほとんどありません。先日発売された『なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか』の著者代表で弁護士の倉重公太朗氏に、直接話を伺ってきました。