ユーザーが望むなら、やるべきだ――ディズニー日本法人が「MovieNEX」を作った理由:米本社よりも進んでいる(2/2 ページ)
ディズニーの新コンセプト「MovieNEX」は、日本法人のアイデアで世界に先駆けて始まった「作品」販売方法だ。その狙いをゼネラルマネージャーの塚越隆行氏に聞いた。
日本の利用者が望んでいるのなら、それをやるべきだよ
塚越氏はMovieNEXを生み出した狙いを「シンプルに分かりやすく、消費者と作品との接点を作りたかった」という。「MovieNEXのターゲットはいままでと変わらず『ファミリー』『ディズニー映画を愛しているファン』。まずはディズニー作品を愛してくれている人に向けてアピールします。同時にその予備軍になってくれるような人にも手にとってもらえるとうれしい」
ディズニーでは過去にも、米国におけるデジタルダウンロード戦略として「Disney Studio All Access」や「Digital Copy Plus」といったデジタルダウンロードと連動した販売手法をとっている。だが塚越氏は、「各種パーツは米国の技術を使っているものの、これをつなげて1つのコンセプトとしたのは日本独自の考え。ディズニー映画を愛するユーザーのために1つのまとまったサービスとして提供するのは世界でも初めてのことでしょう」という。
「かつてディズニーは米国での成功例を標準として、世界各地で同じように展開するという手法をとっていた時代がありました。でも、いまではそれぞれの地域、国におけるマーケットの特殊性を理解しています。『日本の利用者が望んでいるのなら、それをやるべきだよ』という文化になってきている。米本社も非常に協力的で、多くの技術者が携わっています」(塚越氏)
大作だけでなく家族で楽しめる短編にも注力
気になるのは今後の展開だ。メディアではなく作品を所有するというコンセプトは、例えば今後さらなる高画質フォーマットが登場したときに、どのように対応するのだろうか?
「MovieNEXのポリシーは『1パッケージ、1プライス』です。今回のパッケージにおいても、ブルーレイ3D版はMovieNEXワールド内で購入できるようになります。今後新たなフォーマットが登場したときには、購入者へのオプションとして提供できるようにするという考え方です」(塚越氏)
では、既存の作品についてはどうか? 現時点では、ピクサー作品である『モンスターズ・インク』シリーズや『トイ・ストーリー』3部作、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを12月までに発売する予定だ。
いずれも人気作であるし、すでにHD映像化されている作品でもあるので納得できるラインアップだ。だが、これらに加えて1つ異色な作品がある。それは1983年に公開されたミッキーマウスが登場する短編作品『ミッキーのクリスマスキャロル』だ。
「実は『ミッキーのクリスマスキャロル』のような短編には私も可能性を感じています。ディズニー作品というだけでなく、ファミリー向けということでも潜在需要は高い。そこを充実できていないのは、素材がないから。MovieNEXはまだ日本で始めたばかりなので大作中心になっているが、早い段階で短編を提供できるような体制にして、家族で短編を楽しむという世界をつくりたい」(塚越氏)
「日本のディズニー」が世界で注目されるきっかけとなるか
MovieNEXの第1弾として発売する『モンスターズ・ユニバーシティ』は、一見、いままでと変わらず単なる「コンボパック」と見られてしまう可能性がある。視聴者が実際に手に取り、どのように受け入れていくのかは注目だ。
特にディズニー作品のような「所有」「コレクション」指向が高いものであれば、成功しやすいのではないかと筆者は考えている。塚越氏も「まだ池に小石を投げた状態。さまざまな企画を考えており、いいものを消費者に届けていきたい」とMovieNEXの潜在能力に期待をかけている。
ちなみに1パッケージ4000円+税という値付けは、既存製品よりも価格帯が上となる。しかし、今後DVD単品といった廉価版を発売する予定はないという。日本独自の施策がどのように受け入れられるか注目したい。
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