今、なぜ「僕は死にましぇん」? フジテレビが中国で『101回目のプロポーズ』をリメイクする理由:それ、ちょっと気になる!(3/4 ページ)
「僕は死にましぇん!」――武田鉄矢がフジの月9で叫んだセリフは社会現象にもなった。あれから22年。フジテレビが中国映画として「101回目のプロポーズ」をリメイクした。
今の中国なら「トレンディドラマ」で勝負できる
細貝康介(ほそかい・こうすけ)/1977年生まれ。大学卒業後、映画制作業務に従事した後、2007年にフジテレビに中途入社し、深夜アニメ枠「ノイタミナ」に関わる。2008年海外ビジネスを行うコンテンツ事業部に異動。中国開発担当として、主に中国向けのテレビドラマ及び映画の企画開発と製作に従事。2013年編成部に異動。
ところで、なぜ中国スタッフは20年以上前の「トレンディドラマ」をリメイクしようと思ったのだろうか? いわゆる日本のトレンディドラマが流行していたのはバブル経済期だった(『101回目のプロポーズ』が放映される直前の1991年3月ごろにバブルははじけてしまったけれども)。そして今、中国経済はまさにバブルに沸いている真っ最中。何か関連性はあるのだろうか。
「今、中国では豪勢なライフスタイルを描いた男女3人の恋愛群像というジャンルが受けています。純愛というよりは、ハイクラスなライフスタイルを謳歌(おうか)している若者の恋をコメディタッチで描く。だから、日本では純愛3部作といわれた『101回目のプロポーズ』も、少し恋愛コメディタッチな演出になっています」
その先駆けとなったのがチャン・ツィイープロデュースで大ヒットになった映画『非常完美(日本名:ソフィーの復讐)』だった。細貝さんはこの映画を現地で見て「このテイストが中国で当たるんだったら、うちのトレンディドラマのトーンは絶対に当たるな」と確信したそうだ。
「イエ・シュンの家が豪華で広すぎるのは、あえてオーバーにやっている演出です。普通、チェリストはあんな家には住めないですよ(笑)。でも、そんな贅沢な空間でホアン・ダーは袋めんをゆでて食べている。これが観客の心をつかむわけです」
失われた数十年によってすっかりスレてしまった日本人が忘れている感情かもしれない。中国の人々は、映画に描かれているライフスタイルをダイレクトに自分の生活のロマンに反映させるという素直な受け入れ方をしているのだ。地方から都市部に出てきた若者が、いつかはああいう生活をしたいなあという純粋なあこがれを娯楽作品に投影しているのだろう。
「『101回目のプロポーズ』を映画化するにあたって追加した要素が1つあります。それは『経済格差』です。達郎は万年係長だったとはいえ、それほど貧乏ではありませんでした。格差があったとしたら『美女と野獣』でしょうか。でも中国のリアルな感情という面では、経済的な差を乗り越えて……というものが刺さるのです」
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