パッケージ萌えと手ごろな値段でオタクの心をつかめ!:オタクの心をつかめ(1/3 ページ)
前回は、オタクの「聖地巡礼」をテーマに、成功した町おこしやコラボ商品について説明した。今回は、手ごろな値段設定とパッケージ萌えで成功した事例を紹介しよう。
集中連載「オタクの心をつかめ」について
本連載は寺尾幸紘著『オタクの心をつかめ 最強の購買欲を持つ顧客たち』(ソフトバンク新書)から一部抜粋、編集しています。
「オタク相手のビジネスはこうして展開せよ!」
膨らみ続けるオタク市場。市場分析だけではない、具体的な成功や失敗例の解説も交え、すぐに応用可能なオタク相手のビジネスヒントを伝授します。「自分はオタクじゃないけど、オタク相手への商売はしたい」という人にオススメの1冊です。
二次元と三次元
ここで、オタクが聖地巡礼の何に魅せられるのかを紹介しようと思う。聖地巡礼はまず旅であるので、普段あまり遠出をしないオタクにとって良い気晴らしになる。オタクは聖地に着くと、作中に登場したシーンと同じアングルで写真を撮り、ときにはキャラクターと同じポーズをとって同一感を楽しむ。もちろん、写真を撮らずに要所を巡るオタクもいるが、彼らも「ここにあのキャラクターがいたんだ」と感慨にふけりながら各地を巡礼していく。
オタクにとって「二次元(オタクにとっての夢の世界)と三次元(実世界)の壁をいかに取り払うか」というのは、現在の最大の課題であり、聖地巡礼はその課題に対する1つのアプローチなのである。「現在の」と強調したのは、日々発達する科学技術とオタクの純粋な欲望によって、いつかその壁がなくなる日が来る可能性があるからだ。この壁が取り払われたとき、オタクはどこへ行くのだろうか……。
聖地となる場所やアングルは一部の優れたパイオニア的オタクによって特定、検証、公開されているが、彼らは自身がパイオニアであることを誇り、作品を何度も見直し、実際の場所と比較して場所を特定していくことに楽しみを感じる。そして、多くのオタクはそれらの情報をもとに計画を立てて巡礼に臨むのだが、この計画を立てるという行為も1つの楽しみとなっている。
パッケージ萌えで大成功「水戸納豆カレー」と「萌え米袋」
これまでの例とは少し異なり、簡単なコラボレーションで売れた商品も存在する。茨城県にある納豆メーカーのだるま食品株式会社は、オタク業界では有名な作家・介錯氏に萌えキャラのパッケージを依頼し、「水戸納豆カレー」(500円)を販売した。この納豆カレーには全3種類のイラストカードがランダムで1枚封入されていたが、その他の作りは普通のレトルトカレーとほぼ同じであった。
TV東京の番組「ガイアの夜明け」で、2010年の冬に開催されたオタクの祭典「コミックマーケット79」でのこの商品の販売のようすが放送されたが、水戸納豆カレーは3日間でなんと248万円もの売上を出したという。
同様のケースとして、2008年9月末に秋田県羽後町のJAうごが発売したあきたこまちがある。人気イラストレーターの西又葵氏に美少女ゲーム風の「萌え米袋」を描いてもらい、クリアファイルを付けてインターネット上で予約注文を受け付けた。この萌え米袋は、予約を開始してからの5日間で例年の5倍近い800件を超える予約が寄せられ、注文の受付が一時的に止められる事態とまでなった。
結果的に注文件数は3カ月で3300件、数量にして32トンにのぼったらしく、1年間の売上の約2倍の数字をわずか3カ月で叩き出したというから驚きである。
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