中国の防空識別圏に日本はどう対応すべきか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
国外、国内問わず米国の影響力が落ちてきている。これを見計らったかのように中国が日本の領空上に防空識別圏を設定した。米国の援護が見込めない今、日本はどう対応すべきか、正念場を迎えている。
“防空識別圏”問題の解決に米国の援護は見込めない
このような米国の状態を見て、動き出したのが中国だ。日本側に大きく張り出し、しかも尖閣諸島を含む上空に防空識別圏を設定した。防空識別圏そのものは各国が勝手に決めるものだから、通常口を出すことではない。しかし今回のケースは日本の領空を含むということで大きな問題となった。日本の領空を日本の航空機が飛行するときに、それこそ中国からとやかく言われる筋合いはないからだ。
米国も素早く反応した。国務省はケリー国務長官の声明として「中国による一方的な現状を変更しようとする行為について米国は深く憂慮している」とし、「領空を侵犯する意図のない外国の航空機が、防空識別圏を飛行したからといって、国籍を明らかにせよなどと威嚇して要求することのないように」と注文をつけた。
中国がこれによって「偶発的衝突」を狙っているとは思わない。もしそうしたトラブルが起きれば、それこそ外国企業は中国から資本を引き揚げ、中国の経済が大きなダメージを受けてしまう。人民解放軍がどう考えようが、損が大きいことは明らかだ。ASEAN諸国が反発する可能性も高い。南シナ海で同じことが起こり得るからだ。
安倍首相は国会で「米国と緊密に連絡を取りながら」対処すると答弁した。それはそうなのだが、尖閣で「有事」が発生したら日米安全保障条約第5条に基づいて米軍が出動するかと言えば、その答は「ノー」である。米国は中国に対して“口先介入”でとどめたいのが本音だろう。「尖閣は日米安保条約の適用対象だ」というのが精一杯かと思う。
米国の影響力は明らかに落ちた。オバマ大統領はアジアへのコミットメントを明言したが、果たしてそれがどの程度の実効性を持つかASEAN諸国は様子を見ている。米国の出方次第で、日本の立場は変わるだろう。米国がASEAN諸国の期待に添えなかったときに、彼らに本気で手を差し伸べるだけの胆力があるか、日本の外交が正念場を迎えていると言える。
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