日本は各国と協力し、中国の“野心”を封じ込めよ:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
中国の防空識別圏の狙いは東シナ海の覇権を米国から奪うことにある。資源ルートの安定化や米国への攻撃も見据えているが、この野心を日本が周辺各国と協力して抑え込まなければならない。
中国の“野心”をどう封じ込めるか
中国が南シナ海における覇権を重視しているのは中東、アフリカ、オーストラリアなどから来る資源の通り道であるからに他ならない。日本もかつて南シナ海が重要であると考えていたからこそ、南方に進出した。今そういったことを考えなくてもすんでいるのは、南シナ海やマラッカ海峡、そしてインド洋に米国にらみを効かせているからだ。
しかし、もし米国の体力が衰えてこうした海域が中国の支配下に入ったらどうなるか(中国海軍が配備しようとしている空母機動部隊はまさにそれを狙ったものだ)。ちなみに初めての原子力潜水艦を建造したインドは「インド洋で好き放題にはさせない」と中国を念頭においた発言をしている。
日本が単独で中国に対抗する(少なくとも軍事力で)のは無理だ。争えば互いに傷つくと分かっていても、力のあるほうが野心を持つのは歴史の示すところである。この野心を抑え込むには、安全保障の環を広げるしかない。今日本にとって一番の脅威は中国なので、北はロシアから韓国、台湾、ASEAN諸国、さらにインドまで視野に入れて有効な手を打てるか、有り体に言えば“中国封じ込め”を完成させられるかだ。
こういったことを「米国の存在が今後弱まっていく」という前提で考える必要がある。オバマ大統領の任期はあと3年。その後に強力なリーダーシップの外交がよく分かった人物が大統領になればまた状況が変わるが、理想主義を掲げ対立することを嫌うオバマ大統領の就任期間は右肩下がりと考えたほうがいい。
間もなく開かれるASEAN諸国との首脳会議はその意味での試金石だ。当然、中国はここでの話題の1つに上がるだろう。もっともASEAN諸国も対中国に対して一枚岩ではない。親中派のカンボジアやミャンマーがいて、反中派のベトナムやフィリピンがいる。これらの地域で力を持っているのは中国出身の人々だ。
それでも彼らは、東シナ海に中国が設定した防空識別圏に不安を感じている。南シナ海でも遠からず同じことが起きると予想できるからだ。軍事的に対抗することが難しいASEAN諸国と、日本がどう手を携えて中国を抑え込む、あるいは封じ込めるか。これこそ外交だ。安倍内閣の外交での正念場がもうすぐやってくる。
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