赤字部門の書籍編集部が生まれ変わった秘密とは?――プレジデント社:これからの働き方、新時代のリーダー(4/4 ページ)
平均年齢53歳、雑誌を引退したベテランの“名誉職”だったプレジデント社の書籍部門。一時は廃部も検討されたという弱小編集部が、赤字部門の汚名を返上し、ヒットを連発するようになった秘密とは? 書籍部長の桂木栄一氏に聞いた。
吉岡: 編集者が売ることをそこまで意識して本を作ってると、強いですよね……。出版社の編集者からよく聞くんですが、「自分はすごくいい企画だと思うのに、新しい企画が販売会議を通らない」と。「販売が分かってないんだ」と愚痴るんですね。売れた数字でしか納得してくれないから、結果として前例のある企画しか通らず、同じような本ばかり出て、本がつまらなくなるんだと。
桂木: データは大事ですよ。でも、データだけを見て売れ筋を判断すると失敗します。データはあくまで検証の道具であって、鵜呑みにしちゃダメです。ストーリーがパッと想像できるものじゃないとヒットしないと思います。
本を「作る」視点も変化
吉岡: 組織改編によって本の売り方が変わってきたというお話でしたが、本を「作る」という視点ではどんな変化がありましたか。
桂木: 雑誌に比べると、書籍は自由度が高いからいろんなことにチャレンジできるんですよね。これまでプレジデント社といえばビジネス書中心でしたが、最近は実用書やスポーツ本、タレント本など、ジャンルを広げていろいろな本にチャレンジしています。
吉岡: 出版社って大抵得意ジャンルがあると思うのですが、普段あまり扱わないジャンルの本でも売れるものなのですか?
桂木: 編集と販売が個々人で密に話し合うようになって、価値判断が「前例」だけじゃなくなったんですよね。これは大きいと思っています。新しいジャンルの本にチャレンジすると、前例がないからヒットするかどうかは作ってみないと分からない。でもそこを、情熱で突破できるようになった。本を細く長く売り伸ばすためのコツも分かってきましたし。
吉岡: なるほど。そういう変化が、2012、2013年とヒット作の連発につながったのですね。……ところで桂木さん。Facebookに「本日の日経朝刊のベストセラーランキングで弊社の本が2冊ランクインしました。私が書籍部長になって初めてのことです」って書いてありましたけど、あれは何の本だったのですか?
桂木: 大前研一さんの『日本の論点』と、小山昇さんの『絶対に会社を潰さない 社長の時間術』です。日経朝刊のベストセラーランキングには、いつもダイヤモンド社やサンマーク出版の本がたくさんランクインしていてうらやましかったので、うれしかったですねえ。
吉岡: 両方とも、単行本だけじゃなくKindle版も出ているんですね。
桂木: 最近のうちの書籍は、原則、発売と同時に電子書籍版も出していますから。その2冊はどちらも面白いですよ。オススメです!
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