靖国神社は“恒久平和”を誓える場所ではない:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
靖国参拝やダボス会議での発言など、安倍首相の中国に対する言動に注目が集まっている。中国の外交官から「好戦的な日本が復活している」と言われ、米国などからも批判を受けているのは何故なのか。
中国が有利になる口実を与えるな
ところが安倍首相は、A級戦犯がまつられているから参拝しないという「外交上の論理」すら無視して参拝した。これまで参拝を控えてきたが、日中関係はよくならない、これ以上失うものはない、という判断だったと報道されている。
しかしそれはおかしな話だ。現状が悪いからと言って、さらに相手から責められる口実を与えるようなことをすべきではない。米国からは「失望した」という反応を受けてしまい、米国以外の同盟国も安倍首相をタカ派(強硬派)とみなしている。
政権のスタート時は、そうした懸念をよそに経済再建に力を入れていたため、波風は立たなかったが、靖国参拝やダボス会議での発言と続くと、同盟国からの評価も下がる。ややもすれば、東アジアで問題を起こそうとしている国という見方をされるかもしれない。そうなれば、日米同盟を揺るぎないものにした上で、中国と対峙するという戦略は崩れるだろう。
もちろんタカ派の首相であっても、日本が中国と戦争という道を歩むことはないだろう。中国ですらそんなことは考えていないはずだ。ただ、日本が中国との対立で少しでも優位な立場に立とうと考えるなら、欧米諸国やASEAN諸国、インド、ロシアといかにうまく関係を築くかが重要になる。
それは経済協力をすることではなく、これらの国が日本を理解し、日本に共感を寄せるようになってもらうということだ。そのためには、わざわざ中国から難癖をつけられるような言動はしないことだ。より成熟した責任ある国家としての振る舞いが求められる。安倍政権になって以降、外交的にはまだプラスの部分が多いと思う。これ以上、対中国で失点を重ねるべきではないのだ。
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