宮崎県 VS. 沖縄県、巨人の春季キャンプ地を巡る戦い:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/4 ページ)
2月1日からプロ野球各球団の春季キャンプが始まった。人気球団・巨人のキャンプ地をめぐって、50年以上の伝統がある宮崎と多くの球団が集まる沖縄との間でしれつな戦いが起きている。
サンマリンスタジアムの“名付け親”といえば……
ところが、そう簡単には巨人が宮崎から完全撤退できないネックもある。前述の「サンマリンスタジアム宮崎」があるからだ。同球場の愛称「サンマリン」は「さんさんと降り注ぐ太陽」と「雄大に広がる海」が宮崎のイメージにピッタリはまるということから公募によって選考された。
だが、「実を言うと、真の命名者は巨人の長嶋茂雄終身名誉監督。取材中の記者が、まだ建設中の新スタジアムの名称について当時巨人の監督を務めていた長嶋さんに聞いたところ『宮崎の太陽と海』を引き合いに出して『サンマリンなんていいね』と語ったことが大々的に報じられたため、同名で多数の応募があった」(前出の球団関係者)という。
国民栄誉賞も受賞したヒーローであり、巨人にとってもレジェンドの長嶋氏が名付け親となっているサンマリンスタジアムをやすやすと捨て去るわけにはいかない――。そう悩む巨人側に宮崎市の関係者たちは舞台裏で「長嶋氏が命名したサンマリンスタジアムを優先的に使用できるのは、ジャイアンツさんしかないんです」などと説き伏せ、必死の残留交渉を現在も継続させているという。
サンマリンスタジアムは、国内でも有数の天然芝球場だけに莫大な維持費用がかかると言われており、同県では「仮に巨人が春季キャンプで使わないなんてことにでもなれば、すぐに球場の整備費用だけで赤字が膨れ上がり、宮崎市ひいては県の財政もパンクする」ともささやかれている。
巨人が撤退した場合、代わりに他球団を誘致するという選択肢もあるが「サンマリン=長嶋氏というイメージがあるから、巨人以外の他球団はちょっと使いにくいのではないか」との指摘も多数出ている。それだけに宮崎市としては那覇市の攻勢を断ち切り、何としてでも巨人の春季キャンプ地を死守したいところだ。
もちろん、このまま「巨人頼み」だけになるわけにもいかない。宮崎市は清武総合運動公園の整備に約9億円を投じて第2球場建設など野球施設の充実化を図る方針を固め、新たなプロ野球球団のキャンプ誘致にも心血を注ぐ構えを見せている。いずれにせよ、宮崎と沖縄のキャンプ誘致をめぐる“仁義なきバトル”は今後も激化しそうな雲行き。どちらに軍配が上がるかで両市の経済状況は大きく変わるだけに、ビジネスパーソンにとっても気になるところだろう。
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