なぜ歯ブラシを買うのに迷うのか? 客の行動を分析して、分かったこと:仕事をしたら“客の迷い”が見えてきた(前編)(2/6 ページ)
お店の棚の前で「これにしようかな。いや、こっちにしようかな」と迷ったことがある人も多いだろう。そんな人の“迷い”を可視化するサービスが、2013年からスタートしている。お客の購買行動を分析することで、どんなことが見えてきたのだろうか。
米国のスーパーを見て、驚いた
土肥: 3Dセンサーを使って、お客の購買行動を数値化したのは、日本では初めての試みだそうですね。どのようなきっかけで、このサービスを始められたのでしょうか?
深谷: 私は以前、パナソニックで防犯カメラの仕事に携わっていました。米国で働いていた時期があるのですが、現地の大手スーパーに設置されているモノを見てびっくりしました。防犯カメラといえば犯罪や不正などを防止するために、通常はレジ付近に設置されているのですが、そこだけではなかったんですよ。店内のあちこちに設置されていました。
土肥: それは万引きを防止するためじゃないですか? パンとかジャムを盗む人もいるでしょうし。
深谷: 私もそう思ったんですよ。で、担当者に「万引き防止のために設置しているんですか?」と聞いたところ、答えは「No!」。詳しく聞いてみると、パン1個、ジャム1個盗まれるのはよくないことだが、そのために防犯カメラを設置しているわけではない。店内にいるお客がどのように動いているのか。ある商品のプロモーションによって、お客の滞在時間はどうなっているのか。そんなことを計測していたんですよ。1992〜1993年のころの話ですね。
土肥: えっ、そうだったんですか!? そのころ私は米国に留学していて……そーいえば、スーパーにはたくさんの防犯カメラが設置されていたような。でも、それって防犯のためだと思っていました。
深谷: 当時の日本の常識で言えば、「防犯カメラ=レジ付近」でした。ですが、米国では「防犯カメラ=レジ付近+店内のあちこち」だったんですよ。私たちは防犯のためにカメラをつくっていたのに、米国ではマーケティングに使っていた。これには驚きましたね。
話は変わりますが、ネットの世界ではトラフィック分析(サイト訪問者の動向を把握すること)は当たり前のように行いますよね。ネットでできるのであれば、リアルの世界でもできるのではないか――。そんなことを考えていたら、米国のスーパーで見た「防犯カメラ」のことを思い出したんですよ。お店にとって防犯カメラを設置するのは「コスト」に過ぎません。しかしマーケティングに使えるとなると、「売上アップ」につながるかもしれない。じゃあ、売上アップのために貢献できれば……と思い、会社を立ち上げました。2007年のことですね。
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