マー君の年俸22億円、ヤンキースの巧妙なる錬金術:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)
田中将大投手と7年総額158億円の大型契約を結んだニューヨーク・ヤンキース。なぜ、ヤンキースはいとも簡単に巨額な資金をねん出できるのか?
子会社を使って、放送権収入によるMLBへの上納金を削減
ヤンキースを含めメジャー各球団にとって、地元テレビ局からの放映権収入も大きい。全国ネットやオールスター、ワールドシリーズなどの放映権料はMLBが一括管理するが、ローカルネットワークは別。米国ではケーブルテレビが浸透し、大都市の普及率は実に90%以上にもなっている。メジャー各球団とも地元のテレビ局に主催試合の放映権を売り、多いところでは1億5000万ドル(約156億円)にも達しているという。
とはいえ、メジャーリーグには前途の所得分配制度がある。テレビ局から高額な放映権料を得たとしても入場料収入と同じく球団の所得と見なされ、どうしても一定の課税額から逃れることはできない。それならばと「裏技」を編み出したのが経営術にも百戦錬磨のヤンキースだ。
2002年に、親会社のヤンキー・ネッツ(現在はヤンキー グローバル エンタープライズ=YGE)が、豊富な資金力で傘下の地域向けスポーツ専門局「YESネットワーク」(以下YES)を設立した。球団の収入に計上される放映権料を極力安く抑え込もうと考えたのである。簡単に言えば「球団にそれほどお金が入らない代わりに、傘下のグループ会社でもうけたカネを球団の親会社が吸い上げる」という発想だ。
YESは、本拠地ヤンキースタジアムにおける公式戦中継の独占放映権を得たことで、ヤンキースファンの固定加入者をしっかりとキープ。しかも同局は、NBA(全米プロバスケットリーグ)のブルックリン・ネッツ、NHL(全米プロアイスホッケーリーグ)のニュージャージー・デビルス、NFL(全米プロアメリカンフットボールリーグ)のニューヨーク・ジャイアンツの放映権まで一括管理している。
つまり、YESはマンハッタン近郊を拠点とした米国4大プロスポーツチームのホームゲーム中継を独占しているのだ。加入世帯数は1500万件を超え、年間平均収入が約2億ドル(約204億円)ともささやかれている同局の収入によって、親会社のYGE、ひいては同じグループのヤンキースも設立当初の目論みどおりに潤い続けた。
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