マー君の年俸22億円、ヤンキースの巧妙なる錬金術:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)
田中将大投手と7年総額158億円の大型契約を結んだニューヨーク・ヤンキース。なぜ、ヤンキースはいとも簡単に巨額な資金をねん出できるのか?
ぜいたくなVIP席での野球観戦がステイタスに
さらに、ヤンキースにとっては入場料収入も貴重な資金源だ。ヤンキースタジアムには「クラブシート」と呼ばれる高額な客席が約4000席設けられている。このチケットの購入者は、ふかふかのソファに座りながらバックネット裏などの絶好の位置で野球を観戦できるだけでなく、専用の高級ラウンジやバーも利用可能。
2009年の新スタジアムオープン時から設けられた同シートは、スタート当初こそ「野球観戦にラグジュアリー(高級感)を追い求めてどうするつもりなのか」などとメディアに叩かれたこともあって客足が伸び悩んだが、徐々に右肩上がりへシフトチェンジした。あえてVIP感覚満載の高い付加価値を設けることによって富裕層の取り込みに成功し、現在も不況の時代を苦にせず高い利益を得ている。
「人気が集まる試合では1席2800ドル(約29万円)の値段にまで跳ね上がるクラブシートが完売してしまうことも珍しくない。しかもクラブシートの他にヤンキースタジアムには『ラグジュアリーボックス』と呼ばれるVIPルームもあって、その年間使用料は1室60万〜85万ドル(約6100万〜約8700万円)。2014年も51室のうち49室が売れており、残りの2部屋も1試合ごとにバラ売りされる。富裕層の間には、ヤンキースの試合をVIP席で観戦することをステイタスとする傾向が広まっているようだ」(前出の関係者)
こうしたニューヨークのお金持ちをターゲットにしたチケット販売戦略が功を奏しているのは間違いなく、近年のヤンキースの年間入場料収入は3億ドル(約306億円)前後で推移しているとも言われている。
基本的に入場料収入は、所得分配制度によってメジャーリーグ機構(MLB)へ一部を拠出しなければならないが、その点にも抜かりはない。2009年から新ヤンキースタジアムを建設したコストが控除されて大幅に免除されているからだ。15億ドル(約1538億円)もの建設費を投じたとはいえ、これは長い目で見れば確実な先行投資となっていると言えるだろう。
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