タダ飯を食べたかった「ドリアン・ナカモト」――ビットコイン、悲しき大誤報:伊吹太歩の時事日想(1/5 ページ)
世界中で最もホットな話題の1つとなった「ビットコイン」。考案者とみられる人物を特定したというニューズウィーク誌のスクープ記事から、「誰でも分かるビットコイン騒動」を読み解く。
著者プロフィール:伊吹太歩
出版社勤務後、世界のカルチャーから政治、エンタメまで幅広く取材、夕刊紙を中心に週刊誌「週刊現代」「週刊ポスト」「アサヒ芸能」などで活躍するライター。翻訳・編集にも携わる。世界を旅して現地人との親睦を深めた経験から、世界的なニュースで生の声を直接拾いながら読者に伝えることを信条としている。
恐らく、今世界で最もホットな話題の1つは「ビットコイン」だろう。ここ最近、日本でも立て続けにニュースになった。
ビットコインについて簡単に説明しておこう。ビットコインとは、1ビットコインを単位とする仮想通貨で、ネット上の「現金」のようなものだ。円やドルのように流通を管理する国や金融機関はなく、正式な通貨と認めている国もない。ちなみに非常に複雑な演算を解読してビットコインを発行(ビットコインを作ること)が可能だ。
だが、Web上に取引所が存在し、実在する通貨との換金が行われている。最近では実生活の中でも、ビットコインを使える場所は増えている。レストランやオンラインサービスなどで、2013年8月の段階で、世界に流通するビットコインは15億ドル(1550億円)を越えた。
もちろん批判もある。マネーロンダリングなどの犯罪に使われるという批判があり、実際に事件が報告されている。また、既存の銀行が不要になるため、その真価や信頼性について思惑が入り交じり、「通貨だ」「通貨にあらず」といった議論が今も続けられている。
謎の人物「サトシ・ナカモト」を特定した!?
そんなビットコインについて、最近立て続けに大きなニュースが飛び交った。2014年2月には、東京都にあるビットコイン取引所のマウントゴックスが、470億円相当のビットコインを盗まれ、経営破たんした。さらに2014年3月初めには、シンガポールでビットコインの取引所を運営する米国人女性が自殺したことで話題になった。
そして今、とりわけ世界的に大きな話題になっているのは、ビットコインの考案者である「サトシ・ナカモト」の正体だ。というのも、ナカモトは2009年にビットコインのコンセプトなどをまとめ、2010年末に自らのことは語らないまま、別のことをやると言い残してこつ然と消息を絶っているからだ。
そもそもネット上のやり取りで創られたビットコインだけに、開発者たちにもナカモトに会った人はいない。「サトシ・ナカモト」が本名なのか、実在するのかも分からない。
先週、米国のニューズウィーク誌が、ナカモトの正体を突き止めたと大スクープ記事を掲載したことで、その真偽について大変な騒動に発展している。3月14日号に掲載された「ビットコインの裏にある顔」という記事で、ニューズウィークの公式サイトでも無料で読める(参照リンク)。
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