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タダ飯を食べたかった「ドリアン・ナカモト」――ビットコイン、悲しき大誤報:伊吹太歩の時事日想(2/5 ページ)
世界中で最もホットな話題の1つとなった「ビットコイン」。考案者とみられる人物を特定したというニューズウィーク誌のスクープ記事から、「誰でも分かるビットコイン騒動」を読み解く。
ドリアン・ナカモトって一体誰なの?
同誌のリア・マクグレイス・グッドマン記者は、南カリフォルニアの一般的な住宅街に暮らす「ドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモト」という人が、ビットコインを考案したナカモトであると考えた。2カ月にわたる取材で、その人物への接触を試みるが、この人物は記者の自宅直撃取材には応えず、警察を呼んだ。そして警官2人の立ち会いのもと、記者はこの人物からコメントを引き出す。
そのやり取りはこうだ。
ビットコインの開発プロジェクトに関わったことを暗に認めながら、彼はうつむいて道路に目を落としながら、断固として質問に答えるのを拒否した。
「私はもうそれには関与していない、それについて話はできない」と彼は言い、それ以上の質問を左手で遮り拒否した。
「もう他の人がやっており、今彼らが担当している。私にはもう接点はない」
ナカモトはそれ以上語ることを拒否し、警官が私たちのやり取りはこれで終わりだと確認した。
このやり取りが、ニューズウィーク誌がこの64歳の「ドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモト」氏をビットコイン考案者サトシ・ナカモトであると自信を持って結論付けた理由だった。
同誌によると、ドリアン氏は子供のころに日本から母とともにカリフォルニア州に移住してきたという。カリフォルニア州の大学で物理学を学び、卒業後は航空関係の会社で電子通信の仕事をし、その後も、航空関係や政府系の仕事でソフトウェアエンジニアとして働いてきたという。
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