市販ペットボトル飲料水のうち、約半数は「ただ」の水道水:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
米国の消費者団体が調査したところによると、市販しているペットボトル飲料水のうち、約半数のブランドが水道水だという。ペットボトル飲料水を購入するのはカネの無駄か――そんな議論が世界各国で巻き起こっている。
市販ペットボトル水の半数は「ただ」の水道水?
もちろん、メーカーの生命線である水源などを、ほぼすべてのメーカーが明らかにしない理屈は理解できる。ただ米消費者団体「フード&ウオーターウォッチ」は、ボトルウオーターについて正しい知識を得るべきだと主張している。
同団体の調査では、現在市場に出回るボトルウオーターのうち、約半分は水道水だという。例えば、米国でよく目にするアクアフィーナ(Aquafina)やダサーニ(Dasani)といった人気のボトルウオーターは、水道水をフィルターに通しただけに近い製品だ。こうしたペットボトルで売られる“水”は、自宅で蛇口をひねれば出てくる、非常に安価な水とさして代わらない。それを、元は水道水であることを言わずに、何千倍もの価格で販売していることになる。
こうした指摘は米国に限ったことではない。英国でも2012年夏に、スーパーマーケットに並ぶ格安のボトルウオーターが、実は水道水をフィルターに通しただけのものだったとして物議を醸した。
ニューヨーク市は2007年に、世界でも最も安全な水道水を提供する都市の1つであるとして、もっと水道水を飲むよう促す大々的なキャンペーンを行った。ボトルウオーターは環境に負担をかける上に、水道水に比べて格段に高いからだ。さらにニューヨークの水は汚い、というイメージの払拭も目的にしていた。
もしかしたら、東京都水道局はニューヨークのそんなキャンペーンを参考にしたのかもしれない。六本木ヒルズ行きバスの広報映像では、先生が水道水とミネラルウオーターの安全性について説明をする。先生は「水道水の基準項目が50項目以上であるのに対して、ミネラルウオーターは18項目だけしかない」と話す。
どうやら、基準の厳しい水道水のほうが安全だということを言いたいらしい。すると女子学生は水道水を飲みながらこんなオチを言う。
「安くて安全なんて、水道水ズルい」
だが、本当にズルいのは水道水であることを内緒にしているボトルウォーターのメーカーだろう。
関連記事
- 水道水の評価は7.05点――不満な点は?
「日本の水道水は世界トップレベル」といった声もあるが、実際のところ利用者にはどのように評価されているのだろうか。20〜60代の男女に聞いた。ミツカン水の文化センター調べ。 - 日本社会のモラルは低下している? 続発する食品偽装
日本全国のホテルで「食品偽装」が話題になっている。こういうニュースが流れると、「日本社会全体のモラルが低下している」といった声が出てくる。しかし、低下しているのは「モラル」ではなく……。 - 食の偽装が教えてくれた大切なこと
毎週土曜連載でお送りしている『カブ・ジェネレーション』。新しいレストランを見つけた、あずさとはるか。今度行こうとチェックしたのですが……。 - 外の水道水を“フリフリ”して、きれいな水を――携帯型の浄水器
三菱レイヨン・クリンスイは4月に、持ち運びができる携帯型の浄水器「クリンスイ タンブラー」を発売する。価格はカートリッジ付きで3150円。 - 乱発気味? モンドセレクションって実際どうなのよ
昔は、日清製菓の「バターココナツ」や三立製菓の「源氏パイ」の袋に燦然と輝いていたモンドセレクション。今では、サントリーのプレミアムモルツの広告で、「モンドセレクション3年連続最高金賞」というキャッチコピーにまでなっている。……で、実際、どうなのよ? モンドセレクションって?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.