“リクルート流”とは何か? 中国でそれが通じた瞬間:新連載・上阪徹が探る、リクルートのリアル(3/6 ページ)
幅広い領域で次々とビジネスを拡大しているリクルート。今や売り上げは1兆円以上に。今のリクルートって、いったいどうなっているのか。第一線で活躍する“エース”たちから、今のリクルートのリアルを探る。
個性はカオスの先に出てくる
新人時代にもうひとつ、強く心に残ったのが、褒める文化だった。私が働いていたころも、天井から受注や賞の受賞を祝う「垂れ幕」があちこちにぶら下がっていたが、それは今も変わらぬ光景だという。サウスタワーでは、そのために特別なカーテンレールが使われている。
「受注して会社に戻ると、大きな拍手と上司からの握手で迎えてくれる。これは単純にうれしいわけですね。あとは日替わりスター主義。この2つを組み合わせると、上司は本当にしょっちゅう握手してるんですけど(笑)。実は今、中国を始め香港・シンガポール・ベトナム・インドネシア・インドといったアジア中でもこれをやっていましてね。拍手と握手は、万国共通で盛り上がるんです」
営業1年目、すべての四半期で目標を達成することに成功する。ヒントは、配属された同期全員に、上司が語った言葉だったという。「個性はカオスの先に出てくる」――。生き抜くには、自ら模索して取りに行く個性が必要だということだ。
「真夏に自分から『1人飛び込みキャンペーンをやります』なんて同期もいるわけです。その土俵では勝てない。それで自分なりに考えたのは、受注の“打率”を上げることでした。そのために中小企業で決裁権を持つ経営トップに会う。会うにはアポを取らないといけない。でも、朝からがむしゃらに営業電話をかけても、社長とのアポイントは取れないんです」
舘氏はやがて気づいた。忙しい社長が比較的、手が空いている時間は何時か。そして、午後3時に電話をかけるようになる。
「午後一番の会議が終わって、席にいたりすることが多い。しかも『今から行っていいでしょうか?』とその場で聞いてしまう。すると、4時か5時のアポが取れる。朝は忙しいけれど、夕方はホッしていることが多い。話を聞いてもらえることが分かったんです」
受注の“打率”は一気に上がった。上司の言葉をまずは素直に耳に入れられるかどうか。これは、今の中国人の部下のマネジメントでも感じるところだという。
「アジアの人たちもそうなんですが、入り口で悩むんですね。でも、まずはやってみて、後から考える、というステップにしないと。仮に失敗しても、それが失敗だったかどうかを決めるのは、後の自分なんです」
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