「人の視線+α」で○○が分かる――近未来はとにかくスゴくなりそうだ:仕事をしたら“視線”を追いかけた(4/6 ページ)
人の視線を追いかける「アイトラッキング」の技術に注目が集まっている。近年、マーケティング活動に使う企業が増えてきたが、どんなことが分かってきたのか。世界シェアトップのトビー・テクノロジー社に話を聞いた。
多様性が失われると、つまらない
蜂巣: 家電メーカーも同じ。例えば、洗濯機の試作品ができたときに、ユーザーを呼んで、アイトラッキングで分析しました。「ではこの洗濯機を使って、洗濯してください」とお願いしたところ、ユーザーはいろんなところを見ていたので、担当者は驚いていました。「このボタン、誰も見てないよ」「えっ、こんなところを見ているの?」といった感じで。この結果を受け、家電メーカーは機能を見直したりしているんですよ。
あと、詳しいことは言えないのですが、とあるメディアは「自社メディアはこのままでいいのか?」と悩んでいて、アイトラッキングで分析されていました。
土肥: ん? どういうことでしょうか? もう少し教えていただけませんか?
蜂巣: うーん、そうですね(しばし沈黙)。東京に本社があって、地方に支局があって……つまり、同じ会社ですが、それぞれ独自色を出そうとしますよね。その地方メディアもこれまで独自色を出そうと努力されてきたのですが、ユーザビリティというのは突き詰めていくと、だんだん似てくるんですよね。その形……要するに東京と同じようにすると、視聴者または読者は増える可能性は高い。しかしそれをやると、地方色が失われるので、どうしたらいいのか……。そんな葛藤があるようですね。
土肥: Webの世界は分かりやすいですよね。例えば、ポータルサイトの多くは「Yahoo!」のようなデザインになってしまった。
蜂巣: この問題は難しいですよね。Webのデザインはセオリーがあるので、「じゃ、ウチもYahoo! のように……」となると、みんな同じようになる。そうなると、ユーザーは「じゃ、Yahoo! でいい」となる。
土肥: です、です。Webの世界で起きていることを“反面教師”として、先ほどの地方メディアには独自色を残しながら、新しい価値を提供してほしいですね。でないと、みんな東京のような形の情報発信になってしまったら、多様性が失われてつまんないですよ。
関連記事
- 自販機の一等地は「左上」? 人の視線を追いかけたら“常識”が覆った
自販機で缶コーヒーを買う――。日常的な行動なので、意識していない人が多いと思うが、実は自販機には隠れたノウハウがある。マシンの前に立ったとき「人は『左上』に注目する」と言われてきたが、ダイドードリンコがアイトラッキングを使って分析したところ……。 - なぜ歯ブラシを買うのに迷うのか? 客の行動を分析して、分かったこと
お店の棚の前で「これにしようかな。いや、こっちにしようかな」と迷ったことがある人も多いだろう。そんな人の“迷い”を可視化するサービスが、2013年からスタートしている。お客の購買行動を分析することで、どんなことが見えてきたのだろうか。 - ローソンのコーヒーは誰が飲んでいる? データから見えてきたコト
「コーヒーはコンビニで買う」という人が増えてきているが、一体どんな人が購入しているのだろうか。ローソンのPontaカードを分析すれば「どういった人が何を買ったのか」が分かるので、担当者に直撃。男性20〜40代がよく飲んでいるのは……。 - なぜコンビニは人気のない「エッグタルト」を売り続けるのか
ローソンでスイーツの販売データを見せてもらった。それによると「エッグタルト」はあまり売れていないのに、店頭に並び続けている。人気のない商品は消えていくはずなのに、なぜ「エッグタルト」を売り続けるのか。 - コカ・コーラのようなマーケティングが、日本でできない理由
とあるコンサルティング会社が発表した「企業のブランド価値」ランキングによると、「コカ・コーラ」が13年連続でトップ。日本企業を見ると、トップは「トヨタ」で10位どまりだ。Neo@Ogilvyの山崎浩人さんは、コカ・コーラはある特徴的なマーケティングをしているという。それは……
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.