社員の問題意識やアイデアを否定しない:世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる(2/2 ページ)
よく「アイデアはしばらく寝かせておくといい」と言われますが、僕はヒモのついた風船のように「浮かせて」おくのがいいと思っています。必要なとき、いつでもそのヒモを引いて、そのアイデアを活用することができるからです。
「アイデアの風船」を自分の頭の上に浮かべておく
ほとんどのアイデアは、それ単体で完成されていることは稀です。だから、その不完さゆえに、つまらないなどと言われつぶされてしまいがちなのです。そうではなく「アイデアの風船」として、自分の頭の上に浮かべておくようにする。いつでも、そのヒモを引っ張れるようにしておく。
その「アイデア風船」の数は、100も200もあっていい。「これは使えない」と決めつけず、日常の中で何度となく思い出しながら、頭の上のほうに浮かせておけばいい。そして、誰かと話したときに「この風船とこの風船が使えるな」と気付いたら、そのヒモを引く。そう意識しているだけで、相手のクエスチョンに対して「こんなのはどうですか」とすぐに提案ができます。この感覚をつかめれば、いろんなアイデアがどんどん組み合わさって、面白いものが生まれてくるのです。
一般的に、アイデアマンになるためには大量の情報に触れていないといけないと思われがちです。ただ、僕は情報を集めることが目的化すると、そこで得られた情報は活きた情報にはならないと思っています。頭に残らないからです。
僕も当然ニュースは見ます。スマートフォンにニュースアプリを入れているし、TwitterもFacebookもアカウントを持っているし、それらで得た情報が仕事に活きることがあります。
でも、常に走らせている無数のプロジェクトの内容が頭にあり、そこに結びつく情報を取り込んでいるだけです。今は、本当に無限の情報が溢れているので、1人の人間がすべての情報を取り込むことなど絶対に不可能です。ただ、問題意識やQPMIのプロセスの中に自分を置いて、課題を解決するための方法を考え続けていれば、流れる情報の中から、必要な情報だけに反応することができるようになります。目的と手段をはき違えてはいけません。
そして、もう1つ重要なことは、QPMIのサイクルを回す中で「M(mission/member)」のメンバーを集めるために自分からどんどん情報を発信していると、自然に情報が集まってくるようになるということです。
TwitterやFacebookで常に発信し続けることの意味の1つはここにあります。自分が情報を発信する側に回ると、いつか向こうから情報が集まってくるようになります。自分自身のQとPを常に意識して情報を発信し続けていれば、無理に情報を集めようとすることなく、必要な情報だけが取り込めるようになるのです。これは理屈ではなく、僕自身の経験知から言える確信です。
(次回は、「イノベーションを生むカギ」について)
著者プロフィール:
丸幸弘(まる・ゆきひろ)
株式会社リバネス代表取締役CEO。1978年神奈川県横浜市生まれ。
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。
リバネスを理工系大学院生のみで2002年に設立。日本初の民間企業による先端科学実験教室を開始する。中高生に最先端科学を伝える取組みとしての「出前実験授業」を中心に200以上のプロジェクトを同時進行させる。2011年、店産店消の植物工場で「グッドデザイン賞2011ビジネスソリューション部門」を受賞。
2012年12月に東証マザーズに上場した株式会社ユーグレナの技術顧問や、小学生が創業したケミストリー・クエスト株式会社、孤独を解消するロボットを作る株式会社オリィ研究所、日本初の遺伝子診断ビジネスを行なう株式会社ジーンクエストなど、15社以上のベンチャーの立ち上げに携わるイノベーター。
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