キューバ選手の「鎖国解禁」 メジャーと他国球界に与える影響とその裏側:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(4/4 ページ)
キューバの主砲が巨人へ移籍──日本球界に驚きと衝撃が走った。野球強国で知られるキューバ。これまで政府の意向で海外チームへの移籍にはいくつかの障壁があったが、何が変わったのか。このウラに何があるのか。ビジネスの観点から見てみよう。
オモテとウラの両面で「莫大な金が動く」という現実
特筆したいのは、このパターンの多くに共通しているのが、亡命をウラで手引きする裏の力──いわゆる亡命マフィアと呼ばれる者が介在している点だ。
メジャー関係者は「キューバの有名選手には『メジャーに行きたくないか』とひそかに誘いをかけてくる人物が接触を図ってくることが多々ある。その人物がいわゆる『亡命マフィア』と呼ばれる者だ。彼らはメジャー球団から『超大物の○○選手を獲得したいから、うまく亡命を成功させるように導いて橋渡しをしてくれ』と言われて大金を積まれ、動いているという話もある。あるいは事前にメジャー球団から密命を受けたわけではないが、ウラで亡命を手引きした選手からメジャー球団と契約後に礼金を受け取るという“成功報酬型”もあるそうだ」と解説する。
“亡命マフィア”への依頼額は、その選手の市場価値や依頼主となったメジャー球団の資金力などケース・バイ・ケースで上下するが、闇相場では「1件あたり、約50万ドル(約5100万円)から100万ドル(約1億円)」と言われている。これはかなりの額だ。
また最近でこそ聞かなくなったが、ひと昔前までのキューバ選手の亡命には亡命マフィアでなく、米国政府のエージェントが絡んでいることもあったという。キューバの選手個人の経済的動機を利用して「メジャーでプレイすれば大金を手にできるぞ」と亡命を誘発することによって、キューバの威信を失墜させるべくプロバガンダ的な政治的意図が仕組まれていた時代もあったそうだ。前出の関係者によれば「2001年にアトランタ五輪代表に選出されていたローランド・アローホ投手(当時のデビルレイズと契約、2014年現在は引退)やボクサーを五輪開催直前にコスタリカへ亡命させる手引きをしたエージェントは“星条旗を掲げる依頼主”から、500万ドル(約5億1000万円)を受け取った」と言われている。
いくらキューバ政府が限定的な形で海外でのプロ活動を解禁しても、オモテとウラの両面で莫大な金が動くメジャーリーグへの人材流出は、止まりそうもない。
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