地方鉄道とパークアンドライド──観光鉄道を生かせない「アプローチ路線」の機会損失:杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)
鉄道とクルマはライバルではない。むしろパートナーだ。地方鉄道では二つの意味で「パークアンドライド」の導入が進んでいる。一つは通勤、もう一つは観光客の誘致だ。実は後者には「中抜け」されるアプローチ線の機会損失がある。
観光鉄道を生かせない「アプローチ路線」の機会損失
地方鉄道にとって「通勤型パークアンドライド」や「観光型パークアンドライド」はビジネスチャンスの一つだ。マイカーはライバルではあるけれど、敵視するだけでは進展しない。お互いの良さを生かして共存共栄すべきである。
しかし、鉄道ファンとしては、やっぱり観光鉄道まで鉄道で行きたい。そこで観光鉄道までアクセスする路線が気になる。せっかく観光面で魅力ある鉄道が沿線にありながら、生かせていない。例えば大井川鐵道の場合、東京や名古屋から新幹線に乗って掛川駅で乗り換え、東海道本線でアクセスできる。SL好きな子どもにとって、新幹線とSLは黄金の組み合わせのはず。しかしこの二つを組み合わせた企画商品は見当たらない。もったいない。
例えば静岡―金谷―掛川―浜松間の東海道本線に「大井川SLリレー号」を走らせたい。車両はかつてロマンスカーの一員として小田急線に乗り入れ、現在は「富士山トレイン」など企画列車として運用している371系がいい。この列車は東京と名古屋の両方から集客できるし、東海道新幹線の中では座席を持てあまし気味な「こだま」の利用増も狙える。大井川鐵道は2014年夏、蒸気機関車を「きかんしゃトーマス」仕様にして走らせる(関連リンク参照)。この機会にJR東海も便乗すればいいと思う。
いすみ鉄道とJR東日本の関係は良好のようだ。企画切符の提携もある。これをもう少し進めて、東京からいすみ鉄道が接続する大原駅へ、魅力ある列車を設定したい。東京から手軽なローカル線の旅として、いすみ鉄道と小湊鐵道を利用した房総横断ルートがある。JR東日本自身も木更津から久留里線というローカル鉄道を運行している。これだけの観光資源を、マイカーにみすみす奪われてはもったいない。
実はJR東日本の房総方面の特急は不振で、減便傾向にある。その理由は東京湾アクアラインと圏央道千葉区間の開通だ(参考:東京新聞Webサイト 房総特急 引き潮 高速道充実で利用者減少/2014年3月25日)。2014年3月のダイヤ改正で外房線の特急「わかしお」は2往復の減便、一方で東京駅や羽田空港と外房線茂原駅を結ぶバスは増便傾向だ。観光客だけではなく、千葉に散在する工業拠点へのビジネス客も高速バスに流れている。東京―房総間は、JR東日本が首都圏で初めて経験する「高速バスとの競合」区間だ。せめて観光客を取り戻すために、観光鉄道との連携を深めたい。
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