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地方鉄道とパークアンドライド──観光鉄道を生かせない「アプローチ路線」の機会損失杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

鉄道とクルマはライバルではない。むしろパートナーだ。地方鉄道では二つの意味で「パークアンドライド」の導入が進んでいる。一つは通勤、もう一つは観光客の誘致だ。実は後者には「中抜け」されるアプローチ線の機会損失がある。

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「アプローチ路線」として目覚めた? 富山地方鉄道

 観光鉄道に接続している路線が、マイカーやバスにお客を奪われる。そんな「中抜け現象」に立ち向かう鉄道会社もある。富山地方鉄道だ。

 同社は富山駅と立山駅を結び、立山黒部アルペンルートを形成している。その一方で、宇奈月温泉駅にも達し、黒部峡谷鉄道に連絡する。しかし、黒部峡谷鉄道の乗客のほとんどはマイカーや観光バスだ。

 私は2010年の紅葉シーズンに黒部峡谷鉄道に乗りに行き、富山駅からの往復は富山地方鉄道を利用したけれど、富山地方鉄道は往復ともガラガラだった。わずかな乗客も、地元の観光施設に通勤する人のほうが多いように見えた。黒部峡谷鉄道、宇奈月温泉という魅力的な観光地があるのに、観光客が乗っていない。もったいないと思った。

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photo 富山地方鉄道「アルプスエキスプレス」(出典:富山地方鉄道公式サイト)

 その富山地方鉄道は、2011年に観光列車「アルプスエキスプレス」の運行を始めた。元西武鉄道のレッドアロー号の車体を用いて、従来も特急列車として運用されていた電車だ。これを観光列車として改造した。中間車は木材を多用したカフェスタイルのインテリア。デザインは「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治氏だ。「アルプスエキスプレス」は、立山行きだけではなく、宇奈月温泉行きも設定されている。

 さらに2013年8月からは「ダブルデッカーエキスプレス」の運行を始めた。こちらは京阪電鉄の特急電車を改造した車両で、中間に2階建て展望車両を連結する。主に富山駅と宇奈月温泉駅を結ぶ特急列車として運行されている。これらの列車はそれぞれ魅力たっぷり。黒部峡谷鉄道へのアプローチとして、組み合わせて乗りたい。

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photo 富山地方鉄道「ダブルデッカーエキスプレス」(出典:富山地方鉄道公式サイト)

 地方鉄道にはクルマを取り込む「観光型パークアンドライド」が魅力的だ。しかし、地方鉄道へアプローチする路線にも、マイカーに対抗する「観光列車」の可能性がある。それぞれの鉄道会社にとってビジネスチャンスはある。そのチャンスをどう生かすか。それぞれの鉄道会社の施策に期待したい。


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