指宿枕崎線が廃止候補?――それでも、JR九州が上場する理由:杉山淳一の時事日想(2/6 ページ)
「指宿のたまて箱」で知られる指宿枕崎線に、存廃問題が立ち上がった。理由はもちろん赤字。そこにJR九州の株式上場が加わった。
「指宿枕崎線も検討対象」と地元紙が報じる
産経新聞の記事では、青柳氏は「今すぐに赤字線を廃止」とは言っていない。まずはワンマンカーの導入に続くコスト削減策を実施し、外国人向け割引きっぷなどで海外からの旅客獲得、魅力的なきっぷの開発などを実施する。これらの努力で営業赤字を改善したのちに上場し、その後で路線存廃の議論を、という順序だ。
しかし、すでに線区ごとの収支分析を始めており、廃止対象路線を検討するという。単なる路線廃止ではなく、BRTやジャンボタクシーなどへの置き換えも選択肢である。
この報道の3日後、鹿児島県の地元紙『南日本新聞』は「指宿枕崎線も存廃対象」(関連リンク参照)と報じた。同紙が青柳社長にインタビューしたところ、具体的な路線名が上がった。
指宿枕崎(いぶすきまくらざき)線は、鹿児島中央駅から南下して指宿へ、そのまま薩摩半島に沿って西へ向かって枕崎に至る路線だ。路線長は87.8キロメートル。各駅停車で乗り通すと2時間半から3時間程度かかる。鹿児島中央から指宿までは、観光列車「指宿のたまて箱」が1日に3往復している。車両のデザインは、もちろん水戸岡鋭治氏。浦島太郎のたまて箱をモチーフとし、乗降扉が開くと水煙が上がるなどの演出で知られている。鉄道ファンにとっては、西大山駅の「JR日本最南端の駅」が有名だ。沖縄にモノレールができるまでは日本最南端の駅だった。
指宿枕崎線の時刻表を見ると、鹿児島中央駅と喜入駅の間は1時間あたり2〜3往復の列車がある。これは鹿児島近郊の通勤通学路線という意味合いがあるからだろう。しかし指宿駅を過ぎて山川駅までは1時間に1本。山川駅から枕崎駅までは1日6往復という閑散線区だ。
併走する国道226号線をGoogleストリートビューを見てみたら、片側1車線ながら信号がほとんどない。指宿と枕崎の間はバスの便もほぼ同数だ。ただし乗り継ぎになる上に、運賃は1340円となる。指宿枕崎線の940円よりちょっと高い。鉄道が安すぎるともいえそうである。
ちょっと見渡せば、JR九州の閑散路線はほかにも見つかる。宮崎から大隅半島沿岸を走る日南線、熊本と三角を結ぶ三角線、南九州内陸部の肥薩線や吉都線なども危ない。日南線は宮崎駅と南郷駅の間に観光特急「海幸山幸」が走っている。三角線には天草方面へアクセスする「A列車で行こう」、肥薩線には「SL人吉」がある。どれも人気の観光列車だ。
しかし、観光列車が人気という話と、その路線の存廃問題は関係なさそうだ。突き放して言えば、観光車両は他の路線でも使い回せる。そもそも、どの列車も国鉄時代からの中古車を改造している。いつまで走り続けるか、後継車両を投入できるか、という問題もある。
それにしても、鉄道会社の株式上場の影響で、鉄道事業が切り捨てられるかもしれない。ビジネスとしての理屈は分かるけれど、納得しにくい。
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