夫婦が家族をもう1人増やせない……「2人めの壁」について考える:少子化問題(1/2 ページ)
2人目の子どもが欲しい、でも現実には難しい……そうした夫婦を応援する活動をしている団体が、「かぞくを、もうひとり」と題して少子化について考えるシンポジウムを行った。その内容とは?
2人目の子どもが欲しいけど、さまざまな要因で躊躇(ちゅうちょ)する夫婦が多いという。そうした「ふたりめの壁」を乗り越えて、「家族をもうひとり」持ちたいという、夫婦の想いを応援する取り組みが「1 more Baby応援団」だ。
少子化について考えるシンポジウム
7月25日、1 more Baby応援団は「かぞくを、もうひとり」と題したシンポジウムを行った。少子化問題にはさまざまな要因が絡んでいるが、そのひとつが「ふたりめの壁」。この壁を取り除き、少子化問題を解決するための知見を深めようというのが目的だ。行政や研究者、そして当事者の立場による講演とパネルディスカッションによって、改めて少子化の要因と、その解決の方向性が語られた。
シンポジウムでは、まず厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 総務課の源河真規子氏から、行政による少子化対策の一環として、仕事と家庭の両立支援策への取り組みと、その実績が紹介された。ついで、明治大学政治経済学部教授の安藏伸治氏が、人口学の専門家の立場から少子高齢化の要因について語った。
シンポジウムの最後には、源河氏と安藏氏に、育児をする父親を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」代表理事の安藤哲也氏が加わり、パネルディスカッションを実施。男性が育児に参加しにくい要因について議論した。
市原市、水戸市、府中市規模の人口が毎年減っている
少子高齢化による人口減少社会の現実を数字で振り返ってみよう。2011年の総人口の減少数は約28万4000人(厚生労働省の人口動態統計による)。これは千葉県市原市や茨城県水戸市、東京都府中市などの人口に相当する数字だ。つまり日本では毎年、ひとつの中核都市に匹敵する人口が減り続けているということであり、このインパクトはかなり大きい。
また、人口問題に関して日頃から注目されている数字が「合計特殊出生率」(1人の女性が一生のうちに産む子供の数)だ。2012年は1.41となり、16年ぶりに1.4を越えたが、人口維持のために必要な2.08を依然として大きく下回っている。まだまだ、日本には子どもが足りないのだ。
少子化の最大の原因は「結婚しない人が増えたこと」
安藏教授は、こうした統計値について説明するとともに「有配偶女性の年代別出生率」に触れた。これは、結婚している女性の出生率を、年齢別に見たものだ。実は1970年代と2010年代を比較すると、20代の有配偶女性(結婚している女性)の出生率は今も昔もほとんど変化せず、むしろ10代や30代の有配偶女性では現代のほうが上昇していると指摘する。
つまり、「夫婦の間に子供が生まれているかどうか」に限って言えば、この40年ほどは、それほど減っておらず、10代や30代で生む既婚女性は増えているということだ。一方、非嫡出子(未婚女性が産む子ども)の割合は、戦前こそ多かったが戦後は減り続けて1%前後で推移し、現在は若干増えて約2%程度。こちらも大きく増えてはおらず、日本ではこの40年「ほとんどの子どもは夫婦から生まれている」ことが分かる。
一方で、有配偶率(結婚している率)は下がってきており、このことから安藏氏は「出生率が減っている原因の80%は、結婚しない女性が増えたこと」と断言。そして「平均初婚年齢が上昇しているから、第一子の平均出生年齢も上昇している。平均初婚年齢である30歳で結婚した人は、1人目を32歳で産んだとしたら、第2子は35歳前後で産む計算になる。つまりふたりめを産むことを躊躇しているわけではなく、妊娠においてタイムリミットが迫っているというのが大きな理由」だと、少子化の原因のうち大きいのは、女性の未婚化・晩婚化であることを明らかにした。
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