「ネットダフ屋を締め上げろ」──鉄道業界はなぜ無策なのか:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
運行が終了する寝台特急「トワイライトエクスプレス」をはじめ、人気列車の指定券や寝台券は入手しにくい。が、オークションサイトではこれらが高値で取引されている。こんな状態を放置してはいけない。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
音楽イベント『ULTRA JAPAN』の実行委員会が先日、Facebookで「転売チケットを無効とする」と告知し、話題を呼んだ。その投稿へのコメントを見ると賛否両論あるようだ。これは鉄道ファンにも興味深い事例である。人気列車のチケットもネットオークションの出品が後を絶たないからだ。
『ULTRA JAPAN』の厳しい文言を紹介する。
ULTRA JAPAN 2014 実行委員会と致しまして、インターネットオークションや金券ショップ等にチケットを転売する行為は、目的・理由に関わらず一切禁止しております。
そこで、今後の対策と致しまして、ご購入いただきましたチケットがインターネットオークション等に出品されているチケットだと、公演当日判明した場合、入場を一切お断りさせて頂くことと致しました。尚、その際にチケット代金の返金は行ないません。
実に毅然とした態度である。気持ちがいい。イベント開催地のお台場は東京都にある。東京都は迷惑防止条例でダフ屋行為を禁止している。条例におけるダフ屋行為は「公共の場所で行われた行為」が対象で、実質的にダフ屋行為を黙認するネットオークションサイトは対象にならないらしい。ただしこれは「オークションサイトがチケットを扱う」という状態がダフ屋行為に当たらないだけで、転売目的でチケットを購入した場合は条例の処罰対象になる。過去に転売目的のオークション参加者が摘発、逮捕された事例はある。ちなみに、都道府県の条例では「ダフ屋行為」は売る側だけが処罰対象だ。しかし、最近は「物価統制令」による摘発も行われており、これは買う側も処罰の対象になる。
ところで、この告知内容「判明した場合、入場を一切お断りさせて頂く」が気になった。主催者はチケットが転売品かどうかをどうやって判別するのだろう。イベントのチケット販売を行うキョードー東京の問い合わせ先に電話をかけてみたけれど、自動音声案内でチケット販売の選択肢が案内されるだけだった。もっとも、判別方法を公開したらダフ屋に対策されてしまうから、質問には答えてくれないだろう。
他の音楽イベントの事例を探すと、具体的な入場禁止を示す写真が見つかった。会場の入り口に座席番号を明示し、「この席は転売が確認されているため着席できません」と書いてある。ネットオークションでチケットを販売する出品者は信頼性を高めるため、チケットが確実に存在するという「証拠写真」を掲載する。そこに座席番号が写り込んでいれば、転売ということになる。
このイベントの主催者はこういったオークションサイトを監視し、把握したのだろう。いちいちネットを監視するとは面倒な作業だ。しかし、こうした努力は犯罪者の検挙につながるだけではなく、抑止効果もある。
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