日本よりも海外で注目される「タイ代理出産問題」、報道姿勢に大きな違い:伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)
とある実業家の日本人男性が、タイで代理出産によって20人以上の子供を作っていた――そんなニュースが話題になっているが、日本以上に海外で大きな注目を集めている。海外の報道では実名やパスポート写真まで公開し、厳しく追及しているようだ。
さらに厳しい論調で追及する香港
そして「シゲタ・ミツトキ」が暮らしていたとされる香港も例外ではない。香港の英字紙であるサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は8日、「タイ警察はこの男性を人身売買に関与し、販売目的で子供を作っていた可能性があるとの嫌疑をかけている」とバンコク・ポストよりも厳しい論調でこの騒動を報じた。さらに13日付けの記事では、同紙も「シゲタ・ミツトキ」を実名で「逃亡者」と名指しして報じ、投資先の企業の会議に参加しているとみられるスナップ写真も掲載している(参照リンク)。
さらに同紙は、「タイの代理出産の法律はきちんと規制されておらず、外国人にとってタイが人気になっている。弁護士が人身売買の疑惑を否定しているシゲタ・ミツトキは2012年から65回もタイを訪問した。『シゲタ・ミツトキ』のケースは、オーストラリアの夫婦がダウン症の子供を代理母から引き取らなかったとの疑惑についての報道があったすぐ後に報じられ、アジア中でヘッドラインを独占した」と報じている。
国外の報道をみる限り、「シゲタ・ミツトキ」は、タイからマカオに向けて出国してからの足取りは掴めていない。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によれば、日本の大手メディアの多くが、この男性の住んでいたとみられる香港の自宅前に陣取って張り込んでいるという。日本メディアは、すでに日本に帰国していると報じているが、どのメディアも本人に接触できないままだ。
シンガポールのストレイツ・タイムス紙は、「現在進められている捜査に近い警察筋が16日に語ったところによれば、(見つかった21人の子供たちの)卵子のドナーは、スウェーデン人、スペイン人、ブラジル人、オーストラリア人、イスラエル人、中国人、アメリカ人だ」と報じ、「子供のうち9人は1人のスペイン人女性の卵子」だとしている。
もちろん、国外の報道がすべて正しいとは言えない。だが子供の「掛け合わせ」のバラエティを考慮しているのだろうかと思うと、異常さが際立つ。どんな動機であれ、子供たちの行く末を考えると心が痛むばかりだ。
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