「オープンデータ」を推進、東京メトロの狙いは?:地下鉄全線の列車位置を公開(3/4 ページ)
東京メトロが全線の列車位置や遅延時間といった情報を公開し、そのオープンデータを利用したアプリ開発コンテストを開催する。民間主導で行うのは珍しいケースとのことだが、東京メトロの狙いはどこにあるのか。
オープンデータのメリット「低コストかつ短期間」
欧米で活用に向けた取り組みが進んでいるオープンデータだが、地下鉄の運行情報においては、英国に有名な例がある。ロンドン地下鉄だ。市の交通局が地下鉄の運行データを公開したところ、鉄道マニアのマシュー氏が地図上にすべての電車の位置を表示し、各電車の情報(次駅への到着時刻など)を調べられるサイト「Live London Underground map(参照リンク)」を作成した。
ロンドン市交通局がデータのオープン化に踏み切ったのは、2012年に開催されたロンドンオリンピックで増えると見込まれた外国人観光客に対し、サービスの向上を行うことをIOCに宣言したためだ。当初は各サービスの翻訳を行う有志がいた程度だったが、徐々にデータを活用したアプリがストアに出回り始めたという。
こうした流れを受けて交通局側も、オリンピック期間のみとしていたデータの公開時期を無期限に変更。データを活用したアプリは現在も増え続けている。
オープンデータを実施するメリットは、データを活用する有志の参加者が増えることだ。これにより「低コストかつ短期間で有用なアプリが出てくる」(坂村氏)という。今回のコンテストで東京メトロは総額200万円を賞金として使うことになるが、「同じことをすべて自社でやろうとしたら100万、200万じゃすまない」(村尾氏)という。
作成されたアプリの権利は、アプリの作成者に帰属する。データに問題があれば東京メトロが責任を負うが、アプリ自体に問題があった場合は、アプリ作成者の責任ということになる。「責任がうまく分かれていることで、お互い自由にやれる。優秀なアプリをメトロが買い取るといったことは考えていません」(村尾氏)
データの公開時期については、ひとまず2014年度末までを予定しているという。せっかく作ったアプリが2014年3月までで使えなくなってしまう――ということになるかもしれないが、「コンテストの結果を受け、オープンデータの有用性や改良の方向性を議論するため」(村尾氏)と今後のデータ提供には前向きだ。期限を延長する可能性もあるという。
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